弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

梯久美子「狂うひと 『死の棘』の妻・島尾ミホ」

庄野の太宰もどき問題がまだ私の中でモヤモヤしているうちに読み始めたとこで庄野がけっこう登場してくるのでへえ~となって、しかし、この世代のひとたちって私生活で無茶やってそれをそのまま書くのがブンガクってほんとに思ってたんだろうか。ただ書いただけじゃなくて、文章修行の上でのこととはわかるけど、ネタのためにわざわざややこしい恋愛するとかどうなの。庄野は、早いとこ、婚外恋愛路線から、郊外の平和な家庭生活路線に移って、しかも長生きしてよかったよねえ。思うに、最初に郊外に引っ越ししたのが大成功だったよね。

そして、この本自体もすごい。追い続けていると事実の方から近づいてくること、「漂流記」で感じたことをここでも。あと、評価をさしはさまないで書いてくれている抑制を感じて、ただわかった事実だけを差し出してくれているのがありがたい。

でも電報や紙片はきっと自作自演に違いないし、この夫婦は気が知れないどっちもどっちで、マヤさんがとにかくお気の毒。

ちなみに、小島信夫もちょっと出てきたので、前から読もうと思ってた小島信夫を私はとうとう読み始めたけど、これがまた、さっぱりわからないんだ小島信夫…。意味がというより、よさが…。

 

狂うひと ──「死の棘」の妻・島尾ミホ

高中正彦「弁護士の経験学 事件処理・事務所運営・人生設計の実践知」

ちょっと古典スタイルという感もありますが、わたしが座談スタイルの読み物が好き(行間から本音が立ち上るので)ということもあってか、けっこう参考になりました! おすすめです。 

弁護士の経験学  事件処理・事務所運営・人生設計の実践知 (東弁協叢書)

判例時報2314号 遺族年金

仙台高裁平成28年5月13日判決

DVで別居中に夫が死亡した場合の妻の遺族年金について、受給を認めなかった原判決を取り消し、受給を認めた裁判例です。

判例時報2313号 アメリカ養育費、ムチウチ

・東京地裁平成28年1月29日判決

アメリカ合衆国イリノイ州の裁判所での養育費の確定判決について、執行判決が認められた裁判例です。懲罰的な要素で高額となっているのではないかが争われました。

・松山地裁今治支部平成28年2月9日判決

交通事故による受傷(頸椎捻挫)の可能性を否定する自動車事故工学鑑定意見書の信用性を排斥した裁判例です。

 

保坂和志「地鳴き、小鳥みたいな」

いまは「試行錯誤に漂う」をずっと読んでて、先に読んだ「地鳴き、小鳥みたいな」はちょっとピンとこなかったんだけど、いま、三田文学の保坂特集をつまみ読みしてるとなるほどそういうふうにすごいのかと納得したり。たしかに「キース・リチャーズはすごい」というタイトルは、なんともすごいですよね。で、三田文学。こっちはずっと保坂と1対1でつきあってきたみたいな気持ちなんだけど、三田文学でいろんな作家が保坂を語るのを読んで保坂を相対化できるのが新鮮。

そして前にこういうツイートが流れてきて。

twitter.com

これ、本当にそう!不思議! そして、村上春樹が言うと、保坂がいつも言ってるようなちょっとわけわかんないことでもなんとなく神秘的に受け入れられるって感じがする? 保坂も、脳内反論への再反論とかはもういいから(「試行錯誤に漂う」のどこかだったか、反論しても通じないであろうことで自分の独自性を確認して喜びたいだけか、なんて自己分析してたけど)、もっと当たり前のように自由にわけのわからないことを言ってほしい!

地鳴き、小鳥みたいな

北周二ら「弁護士独立・経営の不安解消Q&A」

さすがにこっちも独立して15年にもなるので特に参考にはなりませんでした。立ち入ったことまでしっかり書いてあって若い人にはいいと思うんだけど。誰か読みたいひといたら言ってください。

 

弁護士 独立・経営の不安解消Q&A

庄野潤三「愛撫 静物 庄野潤三初期作品集」「絵合わせ」「インド綿の服」

長距離移動中に庄野一気読み。

え!こんなの書いてたの?とびっくり幻滅した初期作品。夫である作家が妻の一人称で、不実な夫に対する妻の気持ちを書く、しかも、「魂が抜けたようになって」という表現は、まさに、太宰治「おさん」の「たましいの、抜けたひとのように、」という忘れがたい書き出しが絶対に絶対に浮かぶじゃないですか。そして明らかに、太宰の方がよいんだもの。これで、保坂に対して、でも猫やプロスポーツがこんなに好きな男とは付き合えないと常に思ってるみたいに、庄野に対しても、でもこのひと、初期は太宰もどきだったしな、と常に思うようになってしまいました。

でも、「絵合わせ」で、脈絡なくいろんな話題が出てくるようで、実はさりげなくテーマのつながりがあるのとかはほんとにすごい技だと思って、単なる日記のようでこの文体や展開の練られていることは並大抵じゃないのです。

でもでも、「インド綿の服」までくると、どうなんでしょうねえ。文体や展開がどうというより、足柄山の長女さんの愛嬌あるお手紙に寄りかかりすぎなんじゃないかしら。固定ファンにはもう何でもありという域だったのかなと思うけど。

愛撫 静物 庄野潤三初期作品集 (講談社文芸文庫)

絵合せ (講談社文芸文庫)

インド綿の服 (講談社文芸文庫)