弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

家庭の法と裁判12号 不貞行為

・「不貞行為慰謝料に関する裁判例の分析(3)」

婚姻関係が既に破綻していたという主張について、婚姻関係の認識について

・東京高裁平成28年10月17日決定

兄弟姉妹間での扶養料の負担と、扶養権利者を扶養してきた他の扶養義務者の求償を認めた高裁決定です。

・東京高裁平成28年6月10日決定

母から父に対する子の監護者指定、引渡の保全処分申立を認めた原審判を取り消して、申立を却下した高裁決定です。子は9歳と7歳。監護の開始が強制的でないこと、生育環境が劣悪ではないこと、別居前の監護に主従の差がないこと、本案が係属中であること→緊急の必要性なし。

ジャンナ・レヴィン「重力波は歌う」

訳の関係なのか、叙述は読みやすいとはいえない、わかりやすくも上手でも決してないのですが、我慢して読むと、「果敢で壮大な艱難辛苦の営み」「愚者の野心」のすごさがよくわかります。報われてよかったし実は騒がしいのかもしれない宇宙のことがもっとわかるのが楽しみに思えます。

重力波は歌う アインシュタイン最後の宿題に挑んだ科学者たち (早川書房)

神林長平「オーバーロードの街」

有羽が神になるあたり、「膚の下」感があってぐっときました。記者の内向的モノローグとか、記者とスパイの気取った会話とかはいかにも神林な部分ではありますが、私はこういう神林っぽさはイヤなんですよ。でも「人間というのは自分がなりたいと思う人間にしかなれないものだ」のあたりの会話は、やっぱり「膚の下」感が。

結局、「膚の下」を読んでおけという結論になり、また読み返した「膚の下」。

オーバーロードの街

膚の下(上)

膚の下 (下)

神林長平「ぼくらは都市を愛していた」

ミウの物語とカイムの物語がどうやってつながるのか、どこに連れて行かれるかわからんと思いつつ読んでたらこうなるとは! さすが神林です。

「情報震」という世界観も、緑の廃墟も、観念上の?都市の情景も美しい。

ぼくらは都市を愛していた (朝日文庫)

石光真人「ある明治人の記録 会津人柴五郎の遺書」

 

明治維新に際し、朝敵の汚名を着せられた会津藩。降伏後、藩士下北半島の辺地に移封され、寒さと飢えの生活を強いられた。明治三十三年の義和団事件で、その沈着な行動により世界の賞讃を得た柴五郎は、会津藩士の子であり、会津落城に自刃した祖母、母、姉妹を偲びながら、維新の裏面史ともいうべき苦難の少年時代の思い出を遺した。 

スゴイ本です。こういうのが好きな人って一定数いると思いますが、この本の存在を知るだけで、必読の書と知れるでしょう。「銀の匙」的なビルドゥングスロマンとしてもいけます。

ある明治人の記録 改版 - 会津人柴五郎の遺書 (中公新書)

岡口基一・中村真「裁判官!当職そこが知りたかったのです。」

裁判所の内部事情についてフーンとなり、やわらかく読めます。

しかし本当に勉強になるのは「裁判官はこう考える 弁護士はこう実践する 民事裁判手続」の方で、私はこちらを推します。

裁判官! 当職そこが知りたかったのです。 -民事訴訟がはかどる本-

裁判官はこう考える 弁護士はこう実践する 民事裁判手続 

アビー・スミス「なんで、「あんな奴ら」の弁護ができるのか?」

無罪となった被告人から弁護人へ「あなたのために、本当によかった」

「人は、これまでに人生で行った中で最悪のもの以上の存在である」

「弁護人は、肉体、血、評判、恥、不名誉と名誉を扱うのと同様に、妻、父、母、そして子を扱っているのである」

「「あんな奴ら」は存在せず「我々」しか存在しない」

「やる気」と「深い技術」

「自分に生じた最悪の間違いによって自分を定義されたくない」 

なんで、「あんな奴ら」の弁護ができるのか?