弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

アトゥール・ガワンデ「死すべき定め-死にゆく人に何ができるか」

年末くらいから、読みさしては間をあけてまた最初から読むということを3度くらい繰り返してようやく読了。読みすすめられないのにはわけがあったのですが、そのわけのこともまあどうにかすぎたので…。こういうのは、自分も周りも元気なときにこそ読んで貯めておくべきものだなと思います。

家父長的医師、情報提供的医師、全体像をつかみ共同意思決定をする医師。

今を犠牲にして未来の時間を稼ぐのではなく、今日を最善にすることを目指して生きることがもたらす結果。

死すべき定め――死にゆく人に何ができるか

判例時報2375・2376号 DV支援措置

阪高裁平成30年1月26日判決

DV加害者とされる者の代理人弁護士からの戸籍附票請求を拒否した市長の処分について、代理人弁護士が原告となって処分取消を求めた訴訟で、請求を認容した原判決を取り消して請求を棄却した高裁判決です。事案によっては、代理人弁護士に依頼人への秘匿の誓約を求めて交付するなどの措置の可能性も示唆されつつ、本件では、委任事項が離婚そのものでなく、和解離婚時に定めた仏壇の引き渡し等の処理という点だった(必要性が相対的に低い)のも判断に影響している気がします。

俵万智「牧水の恋」

歌人って…残された歌をみれば我ながら考えればわかりそうなものとは思いつつも、こんなにも自分の色恋をリアルタイムに歌として雑誌に発表してるのがまず驚き。プライベート筒抜けじゃないですか。相手の身にもなってくれ。小枝子さんはそういうのどうでもよさそうでそもそも歌の価値もわからないらしかったのが幸か不幸か。そして妻への口説きの手紙の濃さ!これは文学少女はイチコロなんでしょう。妻のことも美しく歌にしてあげてたんでしょうか、そうであってほしい。

そしてあれらの名歌がこんなに月並みっぽい普通の色恋の背景から生まれたとは。初恋にしてこの泥沼っぷり…恋に恋してるだけの脳天気な時期から、じらされて、得たと思ったら悩まされ翻弄され…というのは牧水側の視点であって、裏返して見れば牧水のダメ人間っぷりひどい。こんなにも生活力がなくてこんなにもロマンチストな男、うわぁ…イヤだ。

しかし体当たりインタビューで記録を残して関係者の死後に公表した弟子の大悟法氏の使命感も立派。そうさせるだけの牧水の歌のすごさでもあり。

牧水の恋

中井久夫「こんなとき私はどうしてきたか」

治るとは病気の前よりよくなること

プロ的エレガンス

きみも大変だね。ほんとうは大丈夫なんだよ

弓は満々に引き絞って放つ

暴れるのはエネルギーがないから

疾病利得 せっかく病気をしたのだから少しはいいこともなくちゃ

「次の患者が待っているから立ち直れるのだよ。でも最低40日はこたえるよ」

一見無駄に見える、あるいは空しく見えるような努力がずっと後でみのっている可能性がある

現状維持がすでにメリット。改善はボーナス

後書きで、若書きだったように振り返っていることも含めてあじわいぶかい。若さの勢い?で書き残してくれたことのありがたみあります。

こんなとき私はどうしてきたか (シリーズ ケアをひらく)

判例時報2373号 私立大学と扶養料、再婚養子縁組と養育費減額

・大阪高裁平成29年12月15日決定

子(私立大学医学部)から父に対する扶養料請求についてもとの養育費(月額25万円)に加え年額150万円の追加負担とした高裁決定です。

・札幌高裁平成30年1月30日決定

再婚+養子縁組により公正証書で定めた月額4万円の養育費の減額を求める申立についての高裁決定。公正証書作成段階で算定表上の標準額を上回る差額分を子らの指数で按分して加算(原審は按分せずそのまま加算)。