弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

単行本

ギャヴィン・ディー・ベッカー「暴力を知らせる直感の力」

・法律違反による逮捕は「法制度」対「法律違反を犯した男」の関係であるのに対し、禁止命令違反は「虐待者である男」対「妻」の関係。だから虐待者に対しては、あらゆる罪状を見つけて訴追するほうが、禁止命令を取るよりよい。 ・問題は安全の確保にあって…

富永誠一「女性・独立社外取締役 就任経緯、取締役会準備、兼職の実情から「悩み」の克服法まで」

わたくしも精進せねばと思ったのでした。

京野哲也編著「こんなときどうする法律家の依頼者対応」、京野哲也「民事反対尋問のスキル」、深澤諭史「弁護士の護身術」

業界本いろいろ

尾身茂「1100日間の葛藤 新型コロナ・パンデミック、専門家たちの記録」

道の有識者会議ももうじき終了、に寄せて。 葛藤にはネガティブな印象がある。意見が対立すれば答えがなかなか見えず、不安定な状況に置かれる。この不安定さに耐えられず、物事を単純化して早くすっきりしたい誘惑にかられる。 現実は極めて複雑だ。安易に答…

2023年6~10月まとめ

・町屋良平「生きる演技」 これ、ものすごかった ・町屋良平「恋の幽霊」 こちらは、ちょっとわからず ・最相葉月「中井久夫 人と仕事」 これは実験であって、実験には失敗というものはない、なぜなら、それはまだ早いとか自分には合っていないらしいとかが…

福丸由佳編「離婚を経験する親子を支える心理教育プログラムFAIT」

・失ったもの、得たもの、支えになったもの、という視点・子どもにとっての上記3点を考えてみる・これから親の離婚を経験する子どもたちへ先輩としてアドバイス・FAIT子どもの権利書・自己分化 情緒と知性が分かれて機能すること・当事者のやるせなさを…

2023年3~5月まとめ

・西加奈子「くもをさがす」 ・中野信子「脳の闇」 ・熊谷晋一郎監修・森村美和子著「特別な支援が必要な子たちの自分研究のススメ 子どもの当事者研究の実践」 ・文學界2023年5月号 市川沙央「ハンチバック」 すごい! ・文藝2023年夏 佐藤究「幽…

デビッド・バインダーら「カウンセラーとしての弁護士 依頼者中心の面接技法」

・「依頼者中心法」その根拠→依頼者は問題の自立的な持ち主である、法律問題は非法的な結末を必然的に伴う、判断は常にリスクを含む、依頼者が判断を実行する・「言葉の凝縮」を探し分解する・依頼者の信頼性に関わる問い→「第三者」技法、「事前説明」の利…

2023年2月まとめ

・浜田敬子「男性中心企業の終焉」 ・林千恵子「すきまから見る 不登校への思いこみをほぐす」 当事者の作文がリアル ・五十嵐彰、迫田さやか「不倫 実証分析が示す全貌」 ・文藝2023年春号 金原ひとみ「世界に散りゆく無法者ども」シリーズ完結 桜庭一…

2023年1月まとめ

・鈴木一「小さな労働組合勝つためのコツ」 労働組合の作り方指南という狭い射程に見えますが、そればかりでない広がりのある内容。モノになる案件を見抜くとか、活動が大きくなるとヘンな人も寄ってくるとかの本音も好感です。弁護士がいろいろ登場して(お…

2022年9月~12月まとめ

○チェ・ジウン「ママにはならないことにしました 韓国で生きる子なし女性たちの悩みと幸せ」 要は戻れない橋を渡るってことなんだけど、本書は渡らない立場でのいろいろ。それはそれでいいが、渡った先については右のふたつ、特に「子育てのパラドックス(原…

日詰正文・吉川徹・樋端佑樹「対話から始める脱!強度行動障害」

・受信・理解のコミュニケーションに偏らず、当人からの発信・表出のコミュニケーション ・日常生活と治療・教育・療育のありかた せっかくよい本なのに関係者の刑事事件化で微妙な存在になってしまっただろうか。 note.com

飛鳥井望、神田橋條治、高木俊介、原田誠一「複雑性PTSDとは何か 四人の精神科医の座談会とエッセイ」「複雑性PTSDの臨床 心的外傷~トラウマの診断力と対応力を高めよう」

・「倒れたら泥でもつかんで立ち上がろう」神田橋先生が自分を励ますためにつくった標語。 ・根性が悪い生き方はそれなりに本人を守っている。この人は「根性が悪い」で自分を守っているなと思う。根性が悪い人は(対応が)楽。 ・言葉で傷つけるのは本人の…

2022年6~8月まとめ

○伴名錬編「新しい世界を生きるための14のSF」 ○信田さよ子「カウンセラーは何を見ているか」 ○澁谷知美、清田隆之「どうして男はそうなんだろうか会議」 ○斎藤環、内田良「いじめ加害者にどう対応するか 処罰と被害者優先のケア」 ○坂上香「プリズン・…

蟻川恒正、木庭顕、樋口陽一「憲法の土壌を培養する」

こんなに面白いと思わなかった!もちろん、読んでも幻惑されてわからないところは多数。プランBがありつつプランAを放棄しない。三層で思考する。最後は個人のそのときのストラテジー。 そして、賢い人は悪口も巧みすぎてたまらない。すねて屈折して反発+…

2022年3~5月まとめ

○井上荒野「あちらにいる鬼」 ○中村圭一「じつは裁判所ってこんな所なんです!」 ○中野信子、三浦瑠麗「不倫と正義」 ○伊藤比呂美、町田康「ふたつの波紋」 かみあわず、掘り下がらず、距離をとって言い合ってるだけでつまんなかった! わたしは朗読の意味は…

山本和彦編著「子の引渡手続の理論と実務」

・審判前の保全処分を債務名義として保全執行する場合の2週間の期間制限について、旧法では執行官による執行着手が求められてましたが、改正により家裁への申立が2週間以内ならよいと解されることになって(とりあえず手元では家庭の法と裁判号外76頁)…

友納理緒「裁判例から学ぶ看護ケアと看護記録 看護師から弁護士になった私がもっと早く知っておきたかったこと」

石川寛俊・勝村久司監修「事例から学ぶ「医療事故調査制度活用BOOK」」

小松原織香「当事者は嘘をつく」

「運動と当事者性」について、前にも少し書いたけど当事者性のない運動、支援…弁護士業務も単なるシゴトではなくそれらの性質を帯びる…について。日ごろ取り扱う事象について当事者性なく関わっている者としてはギクリとしながら、何かを突きつけられながら…

2022年1、2月まとめ

○小田雅久仁「残月記」 ○江國香織「ひとりでカラカサさしてゆく」 ○アンディ・ウィアー「プロジェクトヘイルメアリー」 ああ、ロッキー! ○信田さよ子、上間陽子「言葉を失ったあとで」 ○上間陽子「海をあげる」 ○田中慎弥「完全犯罪の恋」 ○金原ひとみ「ミ…

2021年下期まとめ

○神田橋條治「スクールカウンセラーへの助言100」 ○弘中淳一郎「生涯弁護人」 ○岩本美砂子「百合子とたか子 女性政治リーダーの運命」 ○ヘンリー・ジェイ・プリスビロー「意識と感覚のない世界」 ○メアリー・ジョーンズ「結婚という物語」 ○トールキン「…

片岡武ほか「家庭裁判所における監護者指定・保全の実務」

第2編の主題となるケースは、感情的な妻が二世帯同居を迫る夫に耐えかね子らを連れて別居したものの、妻による監護の物理的心情的行き届かなさ+夫がもとからけっこう関与していた+夫側の監護体制優位で、夫が監護者に指定され子らの夫への引渡を命じられ…

ロリ・アーンスパーガー、奥田健次監訳「いじめ防止の3R すべての子どもへのいじめの予防と対処」

・3RはRecognize,Respond,Report ・原題はStudents with Special Needsとあるものの、邦題は「すべての子ども」 ・親愛なるアビー向けの生徒の返信の内容が、すべて素晴らしいの…これだけまとめた本がほしい。 ・他者の沈黙を断ち切ること ・ゼロトレラン…

佐藤香代ら「弁護士と精神科医が答える学校トラブル解決Q&A」

・法律に違反しない=対応しなくてよい、ではない・できるかどうかは置いておいて、何がどのようになったら、今日、面談をして良かったなと思えますか・事実、感情、要望・怒り→困り・見立てと手立て・ラストシーンではなくワンシーン・対人援助職にとって人…

土井浩之ら「法律家必携!イライラ多めの依頼者・相談者とのコミュニケーション術」

地味な作りの本ですが、よいです。類書もあらためて↓

一般社団法人社会的包摂サポートセンター「DV・性暴力被害者を支えるためのはじめてのSNS相談」

SNSに限らない相談の構えとしても。

甲斐哲彦「家庭裁判所の家事実務と理論 家事事件手続法後の実践と潮流」

裁判官本。通称は「甲斐本」でいいのかしら! ・別居調停感覚の行き過ぎ ・「子プロ」「親ガイダンス」 ・特有財産の審理 ・家事抗告審

安村直己「共感と自己愛の心理臨床 コフート理論から現代自己心理学まで」

白石一文「我が産声を聞きに」