弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

判例時報1920号 相当程度の可能性認容例

東京地裁八王子支部平成17年1月31日判決
褥瘡患者(92歳)に対する適切な栄養管理・感染症対策を怠った過失を認めたが、死亡(喀痰による窒息死)との因果関係を否定し、「相当程度の可能性」は認めた事例。認容額は慰謝料200万+弁護士費用30万。
死に至った機序として、原告は、褥瘡の巨大化等全身状態が悪化したことによると主張したようですが、判決は、「直接の死因は痰詰まりによる呼吸不全」としています。
イメージ的な話しをすると、「全身状態の悪化による死亡」という経過を広くとらえてもらえば、褥瘡の悪化も死亡につながりそうですが、「痰詰まり」と限定されてしまったところから、因果関係の認定が厳しくなっているのではないかと思います。
全身状態が悪化して死に至る経過では、直接死をもたらすイベントとして痰詰まりに限らず色々あるわけで、痰詰まりのみをピックアップしてそれとの因果関係を問うとなると、ものの見方が狭くなるのではないかと。
どちらにせよ、高齢でもあり、入院前からの状態も芳しくないことから、因果関係を認めさせるのは厳しかったのだろうと思いますが…