弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子の読書日記

「中谷宇吉郎随筆集」

中谷宇吉郎随筆集 (ワイド版岩波文庫)
しばらく前に、旭川の平松先生のペットボトルで雪の結晶を作る実験に参加させていただいて、そのときに中谷宇吉郎の随筆のお話しをされていたのが印象に残っていました。
年末年始、休みボケが続いて重たい本が読めずにこれを読み始めたところ、何かたゆまぬ地道な向学心といったものがじわじわと感ぜられて、私自身も復活できました。
特に読んで良かったのは「語呂の論理」という文章。「語呂の論理」とは、ここで初めて知った言葉ですが、挙げられている例でいうと、“マイナスイオンには沈静作用があるからプラスイオンには興奮作用があることは疑いない”というような議論のこと。この随筆のなかでは「語呂の論理」という言葉の定義は無く、例が挙げられているだけなのですが、言葉の勢いだけで理屈のようにみせているけど、実は何の論理性もない文章のこと、とでもいえばいいでしょうか。あまり一般的な言葉ではないと思うのですが、当時は違ったのでしょうか。
こういう、理屈にみえるけど論理性のない文章というのは、たとえば準備書面なんかでもお目にかかることがあり、その欠点を一言で言い表す「語呂の論理」という言葉が一般的な言葉だったら、反論も楽そうだななんて思いました。
書かれたのが戦時下の昭和13年、政治が語呂の論理化していることにまで筆が及んでいて、この時期にこういうものが書かれ得たのですね。
あとは、一般人にとって科学の果たすべき役割について書かれたものもいくつかおさめられているのですが、「あるある」の納豆の件など考えても、著者が憂えているこの当時(昭和初期)の状況は現在と全く変わりないようです。