弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

判例タイムズ1251号 有責配偶者・人身保護

・大阪高裁平成19年5月15日判決
有責配偶者からの離婚請求を棄却した原審に対し、慰謝料等についての一部和解を成立させた上で認容した裁判例です。
原審では、同居期間約10年に対し別居期間12年、17歳と16歳の子(高校生)、子らの病弱、妻の就労不安定、過去の婚費滞納歴、提案された慰謝料150万円が低額であること、財産分与がないことを指摘して棄却しました。
高裁では、子らの意向、離婚した場合の子らへの影響について調査官調査を行い、慰謝料150万円、学費150万円を支払う旨の一部和解をさせた上で、離婚を認めました。この一部和解では、支払条項は離婚の確定を条件としており、また、妻からの別途の請求を制限しない旨も付言されています。
一部和解とは珍しい手段と思います。この件は高裁の種々の工夫のおかげでようやく離婚を認めてもらったということでしょう。原審がそうであったように、ともすれば棄却で終わっておかしくないケースと思います。有責ケースでは、別居年数のことしか念頭にない方が弁護士でも見受けられますが、未成熟子の要件も考えると離婚までの道のりは遠いのです。

・大阪地裁平成19年2月21日判決
親権者父から非親権者母への人身保護請求が棄却された裁判例です。
父が親権者となったのは協議離婚によるものであること、離婚後も父母と子らが同居し、父が単身家を出たことから母による単独監護状態が形成されたこと、母の単独監護となってから約3年半経過後の申立であること、家裁で母申立による親権者変更事件係属中であること・・の事情がポイントと思います。
子は13歳と8歳。13歳について意思能力を認め、「拘束」を否定。8歳について意思能力は認めず「拘束」は肯定したものの、現状の安定、兄弟不分離等から「拘束の顕著な違法性」を否定しました。