弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子の読書日記

大森正博「医療経済論」

医療経済論 (シリーズ・現代経済の課題)
経済のかたい本を読むことなんてほとんどないので普通がどうなのかわからないのですが、経済の本にしては変わってるなと思うことがいくつか。目立つところでは、医師−患者の関係性や、社会の中の強者−弱者の関係性で、アルトゥイズム(利他、隣人愛)をひとつの軸に据えていること。医師は応召義務があるから、損害賠償義務を負わされるから、患者を診るのではなく、最大の理由はアルトゥイズムであって、医師の行動原理は規制にのみ由来しているのではない。という観点から、医療に対する規制を問い直したりしています。また、相互扶助という社会保険の原理を前提に、保険体制から強者が抜け出ること(健康で裕福なひとは保険を必要としない)の是非に関して、隣人が苦しんでいても平気な社会をよしとするか、という問いかけもあります。人間を経済的行動の主体としてだけでなく、経済性と離れた美しい心情による行動主体としても見ているところが印象に残りました。