弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子の読書日記

園尾隆司監修、杉山初江著「民事執行における子の引渡し」

民事執行における「子の引渡し」
著者はいわゆる法律家ではなく、執行官室事務局員という立場で、仕事のかたわら通った慶応大学法学部の卒業論文がもとになったのが本書です。横浜地裁管内での執行の実例が多数紹介されるとともに、理論的にもこの分野の全体像がまとめられていて、子をめぐる法律問題に関わる者には必読と思います。執行での権利実現がどのようになっているかは、その手前の手続をあつかう上でも知っておくべきことですから。
個人的には、権利実現手続が尻抜けになっていることで、その手前の手続全体が正義を失ったものになっているということをあらためて感じました。
ちなみに、本書では、札幌高裁管内では、子の引渡の直接強制を認めないとした平成6年7月8日札幌地裁決定が尊重され、直接強制の申立は却下することになっていると紹介されていますが(平成19年2月の協議会での内容として)、おそらくその協議会の直後に方針の変更があったはずです。平成19年に札幌における第1号が出て、その後も(私の担当事案も含め)複数の直接強制例が出ていることを書いておきたいと思います。