弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子の読書日記

金融・商事判例1356号 証拠保全

平成22年6月23日仙台高裁決定
妻に後遺障害が残ったことで自らが受けた精神的苦痛を理由とする夫申立の証拠保全手続で、病院が妻の同意を確認できないかぎり診療記録を開示しないというので、裁判所が検証不能として検証を打ち切った件で、提示命令申立は黙示に却下されたものとして、提示命令却下に対する即時抗告を不適法とした決定です。
証拠保全で通常は(といっても証拠保全の手続は地域差が大きいらしいのでどの範囲の通常かわかりませんが)相手方が実際に提示を拒否した場合に判断を示すという含みで、証拠保全決定の発令時には、提示命令に対する判断は留保のままで現地に臨むという運用なわけです。
高裁は、検証を打ち切ったということは提示命令は黙示に却下したのだ、弁護士であれば当然それがわかるはずだ、と言っていますが、まあたしかに・・。黙示でなくちゃんと明示にすればいいのにねとも思いますが、代理人も、検証打ちきりのその場で騒がなかったのかなというのも不思議な感じがします。
また、本件で特殊なのは、妻の後遺障害に対する夫の慰謝料という立て方をしていることで、それが病院の開示拒否を招いたようです。どうも妻の後遺障害は判断能力にまで関わるものではないようなので、どうして夫を申立人とする立て方になったのかは不思議。たしかに、普通の損害の主体でない者について、治療費を支出したとか、独自の慰謝料があるという形で申立人にすることも事情によってはあるのですが・・