弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子の読書日記

大坪弘道「勾留百二十日  特捜部長はなぜ逮捕されたか」

勾留百二十日  特捜部長はなぜ逮捕されたか
事件のこと自体はよくわかりませんが、自分で書いてるこの支援されっぷりからすると、もともとは人望ある方なのだろうなと思いました。
「検察官であれ、裁判官であれ、あるいは弁護人であれ、生身の人間が絶対的に拘束され、寸分といえども自らの意思で動けないという自由の絶対的剥奪の世界にかかわっているのである。司法に携わる職業人である彼らがどれだけの洞察力をもって拘束される者の苦しみの現実を踏まえ、司法という世界にかかわっているかを問うた時、はたして何人の者が正面からそれに答えうるであろうか。」は、本当にそうですね。
私がこのたぐいの「勾留され本」に親しむようになったのは、2007年にマサルさんを読んでからで、そのときには、身体検査のタイミングやそれが屈辱的なこととか、勾留質問の待たされる部屋がつらいことなど、そういう物理的な流れのことをまったくわかってなかったな、と反省したものです。
あと、この本は、こないだ読んだ闘病記の本(「生きる力の源に がん闘病記の社会学」)の分類で言うとたぶん「混沌期」にあるのですが、混沌を自分で描写できてる以上は、混沌から脱けつつあるのだろうと思います。この試練も自分に必要な試練だったと振り返りたいという指向性が見受けられます。
それにしても、私の唯一の無罪事件の依頼者が、無罪確定から2年余りで亡くなってしまったことが、どうしてもくよくよと思い出されてきます(自殺説が出ているのを先日知ったけど、AIで分かった死因を私は聞いているので、それは絶対違う)。もともとオーバーワークの方だったのが、何かを取り戻そうとさらにがんばりすぎたのだろうと思う…。彼は亡くなる前に、あの出来事を、必要な試練だったと自分の中で昇華できていたのかどうか、ずっと気になっている。