弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子の読書日記

黒田夏子「abさんご」

abさんご
文体は好み。系統でいえば朝吹真理子だと思いました。そして中勘助中勘助みたいというのが、私の最上の褒め言葉です)。文体が美しいのに、その美しい文体で表現する対象が美しいものばかりでなく人間の醜さもあるってところが、ますます中勘助っぽい(「銀の匙」じゃなくて「犬」や「でーぱだった」の路線の中勘助ね)。
そして、文体が美しいのに、表現の対象は美しさそのものではなくて、美しいものが失われていくさま、失われるそのときには失われると気付かない人間のうかつさ、なわけで、ストーリーの顛末が、人間像が、モヤモヤさせられるもので、読後感はけっこう悪いのです。ぶしつけで図々しいお手伝いさんがのさばりつくして…描かれていないけど、きっと相続でもえげつないことになったでしょう。
レビューなど読んでも文体のことばかり書かれていたけど、川上弘美の選評「ただ、この家庭に入りこんでくるいやらしい女に対して、あまりに元々の家の住み手が無批判すぎません?などと思う自分は、卑俗なのかなあと不安になったりもしつつ、やはりここにある日本語はほんとうに美しいなあと、うっとりしたことでした。」に同感。
併録されている「タミエ」も、イヤな人間像を美しい文体で表現してるってとこは通底しているスタイル。