弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子の読書日記

村上春樹「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年
春樹くささが、特に会話文で、いつもよりも気になりました。久しぶりに読んだからかなあ。
想念と現実とがコネクトすることの表現は「1Q84」と共通する感じ。
死のトークン、論理の「跳躍」のくだりでは、「テルトゥリアヌスの逆説(不合理なるがゆえに吾信ず)」が頭に浮かびました。あとは、「未決の箱」というくだり。この死のトークンのエピソードも、特に回収されず、それこそ「未決」に放り込まれたままになっています。いまどきのライトな小説を間違って読んでしまうと、伏線張りとその回収に血道を上げている感じがあってそれがすごくイヤなんです。物語ではすべてが解明し尽くされる必要はないと思っていて、こんな感じに謎を作って放り出してくれるのが好みです。
あとは、災厄によって絶たれた生命と、生き残った者の心の持ち方。ここは、メッセージを妙にわかりやすくストレートに書いてしまっているなあと思いました。