弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

和田仁孝監訳「医療事故後の情報開示 患者・家族との対話のために」

読みづらいのを我慢してがんばって読んだいちばん最後に、「原文に厳格に忠実であるよりは日本語として読みやすい訳になるように努めた」とあるのを見てええ~?と思いつつ、それでもこういう分野を扱う人は読んでおくとよいでしょう。第9章のショートシナリオ、どれも微妙で、この議論の場に身を置いてみたいと感じました。

・患者擁護団体設立者たちの語りの多くは、傷や過ちについてというより、事故後の自分たちの扱われ方に集中している。情報の非開示、責任回避、謝罪しないこと。

・事故後の患者との関係構築にとっての中核的価値…透明性、経緯、説明責任、継続性、親身さ。これらは、医療者と患者間のみならず、医療機関内のスタッフ全ての関係性で必要。(たしかにそれはそうで、ギスギスした院内で患者対応だけうまくできるわけがないですよね)

・医療者と患者との対話は言葉ではなく感情、方法ではなく想いに関わる。

・「腐ったリンゴ論」

ヒラリー・クリントンバラク・オバマの共著論文。人々が訴訟を提起する際の最も重要な要因は、過失そのものではなく、患者と医療者との間の不適切なコミュニケーションのあり方である。

・エラー後の患者、家族、医療者らの苦悩に訴訟はほとんど手を差し伸べない。エラー後の対話こそが人々が癒され区切りをつけていけるか、その後の人生をとらわれて過ごすかを決める。

・TRACK。Transparency透明性、Respect敬意、Accountability説明責任、Continuity継続性、Kindness親身さ。

・私にもこうした事態(エラー)が起きたということは、それは確かにだれにでも起き得ることなのだ。

・正直さは医療エラーをめぐるパズルの一片に過ぎない。

・being open

・有害事象ゼロを掲げることは改善の障害となる。完璧さを追求する意見は刺激的で意欲を高めるがゆえに強調されているだけで、文字通り求めているわけではない。

・医療エラーの開示に対する医師の消極性。法的責任への懸念よりむしろ、仕事上の評判への懸念や個人的な罪悪感、専門家としての恥。

・完全性への執着、完全性への幻想、医療ナルシシズム。感情的な用心深さ、共感の欠如、支配的態度。

・模擬陪審において、情報開示を経たケースの方が軽めの判断。意思や病院を罰することよりも患者のニーズを満たすことに焦点を当てていた。

ミシガン大学の3つの開示方針。

・ask-tell-askメソッド

・情報開示対話のための4Aフレームワーク。Awareness自覚、Acoountability説明責任、Ability能力、Action行動。

医療事故後の情報開示――患者・家族との対話のために