弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

判例時報1917号 産科認容例・時効起算点

阪高裁平成17年9月13日判決
前置胎盤と確定診断されていた妊婦に性器出血がみられたとして在胎31週4日で帝王切開を行って胎児に障害が残ったことについて、適応外の帝王切開、生後の処置ミス、説明義務違反を認めたもの。請求を棄却した原判決を取り消しています。
原判決では、“脳性麻痺の原因を出生時の低酸素環境に求めることは極めて慎重でなくてはならず、現実には先天異常である場合が多い云々”という、例のパターンの鑑定が出ているようです。原判決は、これに乗っかっちゃったんでしょうか。そういえば過失を認めながらACOGで因果関係を切った大阪地裁判決があったことが記憶にありますが、これの原判決がそれなのかも。


ところで本件は、事故が平成4年、児の障害認定が平成6年、証拠保全が平成7年、提訴が平成10年です。病院側からは不法行為について消滅時効が主張されているのですが、「(控訴人が)被控訴人に対し損害賠償請求が可能であると知るに至った時期は、早くとも(証拠保全を行った日)から相当な検討期間を経過した時と認められる。」と判断されています。
・・・証拠保全をして必要な検討期間が経過した時!
これって、かなり患者に親切な判断ですよね。これまでこういう判断あったか記憶にないですが…あるのかな?(知らないだけかも)
それにしても、「必要な検討期間」ってどのくらいでしょう。本件は、提訴が証拠保全日より3年以内なので、「必要な検討期間」の長さは示されていません。保全後提訴までの期間って、弁護士によってだいーぶ違うので、時効の起算点を左右する「必要な検討期間」がどれだけなのか、ものすごく興味があります。