書店でたまたま平積みになっていて、全集が出ているほどの人なのに名前も知らないとは不思議だな、というだけの理由で1巻をなんとなく買って、そうしたらもうはまった状態となって一息に、しかし味わいつつ読みました。書簡の巻はあえて読まないでいるのですが…これまで、書簡や草稿の果てまで公刊されてる限りのすべてを読んだ作家は3人いて、その3人は私のなかであまりに思い入れのある特別な対象なので、彼らに操を立てるみたいな気持ちで書簡の巻を買わなかったのです。とにかく文章が美しく、なんともいえない味わいがあって、どうしてこの人をこれまで知らなかったのか不思議です。知らないままで終わらず、読めてよかった文章です。