弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

俵万智「牧水の恋」

歌人って…残された歌をみれば我ながら考えればわかりそうなものとは思いつつも、こんなにも自分の色恋をリアルタイムに歌として雑誌に発表してるのがまず驚き。プライベート筒抜けじゃないですか。相手の身にもなってくれ。小枝子さんはそういうのどうでもよさそうでそもそも歌の価値もわからないらしかったのが幸か不幸か。そして妻への口説きの手紙の濃さ!これは文学少女はイチコロなんでしょう。妻のことも美しく歌にしてあげてたんでしょうか、そうであってほしい。

そしてあれらの名歌がこんなに月並みっぽい普通の色恋の背景から生まれたとは。初恋にしてこの泥沼っぷり…恋に恋してるだけの脳天気な時期から、じらされて、得たと思ったら悩まされ翻弄され…というのは牧水側の視点であって、裏返して見れば牧水のダメ人間っぷりひどい。こんなにも生活力がなくてこんなにもロマンチストな男、うわぁ…イヤだ。

しかし体当たりインタビューで記録を残して関係者の死後に公表した弟子の大悟法氏の使命感も立派。そうさせるだけの牧水の歌のすごさでもあり。

牧水の恋