弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

家庭の法と裁判29号 幼保無償化と婚費、子の監護者

・東京高裁令和元年11月12日決定

幼保無償化を理由として婚姻費用を減額しないとした高裁決定です。「幼児教育の無償化は、子の監護者の経済的負担を軽減すること等により子の健全成長の実現を目的とするものであり、このような公的支援は、私的な扶助を補助する性質を有するにすぎないから、」。算定表で考慮済み分を超過するとして加算した金額が婚姻費用とされています。しかし実際には幼保無償化で権利者の費用負担はないのですが。調停実務で考慮することは一概に否定されていないという悩みを見せる解説。

・大阪高裁令和元年6月21日決定

これも、父に監護者を認めた例。子は男女の双子で、長男を父、長女を母が監護。原審は二人とも母(長男については現状の監護を変更)としましたが、高裁は長男を父と。決定時は子は小6。母が子のお菓子を捨てたことがきっかけで長男がカンシャク、母を許さず母も謝らず、父→母に暴力、警察臨場、母単身でホテル滞在→二人とも連れて別居。長男が別居先を抜け出して父のもとに戻る(一度連れ戻されリトライにて)。原審は保全も認めたが長男が拒み実現せず(執行ではなく任意での試み?)。原審は父の監護体制(祖母が対応)を疑問視したのに対して、抗告審は長男の意向を重視。