弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

デビッド・バインダーら「カウンセラーとしての弁護士 依頼者中心の面接技法」

カウンセラーとしての弁護士: 依頼者中心の面接技法

・「依頼者中心法」その根拠→依頼者は問題の自立的な持ち主である、法律問題は非法的な結末を必然的に伴う、判断は常にリスクを含む、依頼者が判断を実行する
・「言葉の凝縮」を探し分解する
・依頼者の信頼性に関わる問い→「第三者」技法、「事前説明」の利用
・語るのを躊躇する話題→「正常性の伝達」(そう感じるのは正常なこと)、補正フィードバックを求める(気に障ったらいつでも言ってください)
・手助けしたいというあなたの思いを再確認する(この酷い状況を切り抜けるための最善の方法を探すお手伝いをしたいと思っています)
・敵意をもった依頼者や怒っている依頼者と仕事をするのは容易ではないし、楽しくもない。しかし、ほとんどの依頼者は、アクティブリスニング、冷却期間、正常性の伝達、手助けしたいというあなたの思いの再確認のような対処技法に応えてくれる。
・嘘が疑われる場合の対応
①予防 本題までに時間をかける、あらかじめ知っているネガティブ情報をこちらから開示する、苦労話 
②対決 説明を依頼する(あなた自信の混乱を防ぐという観点から。信じていないことを明示的に指摘するのではなく説明の機会を与える)、すべてを知る第三者(相手方の弁護士があなたに尋ねるかもしれない質問を尋ねようと思います)
③沈黙
④言葉による直接対決 信じられないこととその理由を直接的に話す。依頼者が実際に嘘を言ったことに確信が持てるときだけ、このような言葉を用いるべきである。しかし、この言葉の目的は、依頼者が真実を話すように手助けすることであることを心に留めておかなければならない。そのため、あなた自身の行いは、その目的と一致しているべきである。たとえば、この言葉を発するときのあなたのしぐさは、手助けのための気遣いと強い意志を示すものであるべきである。そして、この際に、本当のことを話す方が最も得策である可能性があるとアドバイスするなど、依頼者を動機付ける言葉も含めるべきであろう。加えて、あなたは、嘘をついていたことを認めたとしても依頼者を受け入れ続けると依頼者に知らせることもできよう。具体的な発言例(180頁)
・依頼者の目的の変化要因 依頼者自身が最終的に何を求めているか始めは特定できていない 依頼者のはっきりと示された選択肢でさえ、実際に具体的な場面に直面した際には異なる展開をもたらすかもしれない 出来事が起きた際の感情的反応を予測することは難しい→依頼者の目的はある程度の柔軟性と融通性をもって聞くべきである
・予測ミスと認知的錯覚(306頁) 埋没コスト現象、ギャンブラーの錯誤、授かり効果、過信現象、自己奉仕バイアス、係留効果
・CYA(Cover Your Ass)文書 依頼者が悪い判断を行う際は、話し合いと弁護士の推奨をまとめた文書を交付しておく
・刑事実務では、依頼者は、判断形成とそれに伴う処罰の可能性の過程に服するように法的に強制されている。あなたは、依頼者が自分の問題を最善な形で解決するのを助けるという意図をもってまずは始めなくてはならない。そしてカウンセリングがプロセスであることを忘れてはいけない。依頼者中心のカウンセリングの原則を利用することによって、あなたは、刑事司法システムに巻き込まれた人々が過去にどのように暮らしてきたとしても、彼らがよりよい生活を始めるのを助けることができる。