弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

中井久夫「治療文化論 精神医学的再構築の試み」

解説によれば中井先生の「全ての発想が流れ込んだ合流点」という本書。語りはやわらかいのに語られていることの難しさ、わかるようでわからなさを全体として受け止めることによって読後の意識には不可逆的な変容が生じているマジカル。

・二次的疾病利得と正面から闘って勝ち目はない。それは天の時であって、ここで地の利と人の和をつくって実現させるべきである。

・治療者は船を浮べる水、鳥を支える空、いろいろなものを支える大地。おのれを虚しうせよ。自由にただよう注意。

・比較的順調な場合、自分は一つの虚点となり、存在しているのかどうかさえ分からなくなるが、しかもふしぎに不安がない。

・「それでよい」、「それがよいのだ」征服されることによって征服する友好的相互征服

治療文化論―精神医学的再構築の試み (岩波現代文庫)