弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

2011-01-01から1年間の記事一覧

家庭裁判月報第63巻第12号 子の引渡の間接強制却下、子の調査

・東京高裁平成23年3月23日決定 別居中の夫婦間の子(小1)が父方で監護されているものの、母を監護者と指定して母への引き渡しを命じる審判が確定していて、母と子は別居から約1年というケース。直接強制は子の強硬な抵抗で奏功せず。原審甲府家裁で…

赤崎久美「ちづる 娘と私の「幸せ」な人生」

映画と合わせて、良かったです。映画もDVDなどもっと広く見られる媒体になるといいと思う。

医療事故情報センター弁護士のための医療過誤訴訟法講座講義録 円谷峻「医療過誤訴訟における立証責任」

ひごろ訴訟の中で、裁判例を敷衍したつもりでコネている理屈の源流が実はドイツ法にあったなどとわかると深遠な気持ちになります。ドイツ法はこうだ!と訴訟で主張してどうにかなるとは思いませんが、法理論の源流まで意識していればちょっとは説得力がつく…

中根敏勝「小説企業内弁護士 もし弁護士が企業で働いたら」

↓の「小説医療裁判」に引き続き。こちらは私に馴染みのない分野ということもあり、ふーんなるほどねっていう読後感。 ひるがえって考えるに、「小説医療裁判」に私が深い感銘を受けたというのは、いま私も、非法律家向けに医療訴訟を説明する本の原稿を執筆…

小林洋二「小説医療裁判 ある野球少年の熱中症事件」

旭川出張の車中で読みました。旭川往復程度で読んでしまえるボリュームでありながら、医療裁判がどのようなものであるか、患者側が、弁護士がどのような思いで取り組んでいるかが非常にわかりやすく、そして、裁判実務として本当っぽいにもかかわらず小説と…

アクセス解析のことを書くのは悪趣味という自覚はあるのですが(前にツイッターで、裁判所からどんな検索ワードでアクセスしてきてるかをさらしたら、そのあと裁判所からのアクセスが減ったのはやはり気のせいではないと思います)、たまにログをチェックす…

ケース研究309号 家事事件手続法

長秀之「家事調停委員のための家事事件手続法の基礎知識」 タイトルのとおりです。わかりやすくまとめてくれています。

判例タイムズ1355号 相続預貯金

・安西二郎「相続預貯金払戻請求訴訟の論点」 共同相続人の一部が相続分に相当する預貯金の払い戻しを請求する訴訟について問題点が整理されています。 ・浜秀樹「すべきことと否定できないこと」 ……これ、すごく問題な内容だと思います。こんなことこんなふ…

金融法務事情1933号 全店差押

・三上徹「全店差押問題に第2ラウンドがあるのか」 最高裁のときのコメントに引き続き率直な文章。なるほどなと思わされる。 以前、とある高収入な知人から、もし自分が離婚することになったらどうなるのか?とどこまで本気か不明な問いかけがあって、想定…

今月も更新なしで月末まできてしまいましたが、過去日付で10記事あげておきました。

家庭裁判月報第63巻第11号 推定相続人廃除、婚費養育費増減主文

・東京高裁平成23年5月9日決定 推定相続人の廃除が認められた例です。外国に住んでいる養子が年に1回程度帰国して生活費をもらうだけで養親(被相続人)の面倒をみず、離縁訴訟を引き延ばした(引き延ばし中に養親死亡)などという事情のもとで、廃除を…

判例時報2126号 過失の推認

・那覇地裁平成23年6月21日判決 外科的に胆管結石を除去しようとして除去できなかったことについて、「結石の把持が困難であったことについて、その他の原因の存在が認められない限り、本件外科手術における結石の嵌頓は、経胆のう管法の実施中における…

判例タイムズ1354号 期待権侵害

・大阪地裁平成23年7月25日判決 平成23年2月25日最高裁判決後に、この最判に当てはめつつ期待権侵害を認めた裁判例です。産後DICのケースで電話連絡の過誤(医師から血液搬送依頼の指示を受けた看護師が赤十字血液センターの電話番号の確認に手…

判例タイムズ1352号 財産分与

・近藤幸康「財産分与を巡る裁判例と問題点」 実務のスタンダードな扱いのおさらいです。

ジェイムズ・ホーガン「ガニメデの優しい巨人」「巨人たちの星」「内なる宇宙」

[asin:4488663028:image:small] 「星を継ぐもの」がおもしろかったので続編を次々と。これがあるあいだは出張が待ち遠しかったし、道中は読みふけっているあいだにあっというまで、楽しい読書でした。

菅谷昭「新版 チェルノブイリ診療記 福島原発事故への黙示」

空港の本屋ってどうしてこんなに(いつも書いてることなので略)。何となく既視感がある内容だったのですが、震災後に週刊誌か何かで著者が体験を書かれていたでしょうかね。外科医だから言葉が通じなくてもスキルでどこでも通用するというのはうらやましい…

江國香織「金平糖の降るところ」

江國は、ひたむきで純粋で思い詰めてっていう状況を本当に素晴らしいと思って書いてるのか突き放して観察してるのかよくわかんないなーと思いながら読むのはいつもなんだけど、今回もそうです。

石井光太「遺体―震災、津波の果てに」

町全体が被害を受けた場合には遺体の捜索や管理は外部者が行ったのに対して、釜石は被害を受けた部分と無事だった部分に二分したため、遺体の捜索や管理を同じ市民が行うこととなって…という状況のルポ。感情をあおるようなあざとい部分がなく落ち着いて読め…

中島梓「転移」

亡くなるまでの日記、という結末がわかっていて、物理的にページ数が薄くなるのがつらい本。 原発部位が膵癌で転移していてというと、かなりhopelessだと思いつつ読むと、意外と希望を持って暮らしていて、痛みも浮腫も、なんでこんな風になっちゃうんだろう…

打木村治「天の園」「大地の園」

ずっと実家に置いてあった本がたまたま出てきたので再読。たぶん小学生以来?だと思うのだけど…。当時から今までも、よそではこの著者も書名も聞いたことがない(単に寡聞だからかもしれませんが)のであまり有名じゃないのではと思うのだけど(でもそのわり…

家庭裁判月報第63巻第10号 婚費裁判例

・広島高裁岡山支部平成23年2月10日決定 子らが毎週金曜夕方から日曜夕方まで義務者のもとで過ごしており、その期間中の子らの食費等を義務者が負担しているケースで、算定表による金額から義務者が負担している費用相当額を控除して婚姻費用を定めた裁…

島崎今日子「〈わたし〉を生きる――女たちの肖像」

これまで知らないでいた立派な女性がいることを知ったのはよかったのですが、よくもわるくも「アエラ」っぽい切り口、文章という印象。みんな鬱屈屈折を抱えすぎてる(ように書かれすぎてる?)。これの前に読んだ「和子の部屋」の中で「喜怒哀楽のなかでベ…

阿部和重「和子の部屋 小説家のための人生相談」

この作家の本は読んだことなかったけど、なにかの書評で興味を持って買ってみた。男の人としてはありえないほどに、女性作家の悩みについての問答が噛み合っていて、驚きに打たれた。だからこそ「和子」という設定なのだけど…それにしても本当にこんなことが…

石倉洋子「グローバルキャリア」

友人が読んでたからというのと、これから世の中に出ていく息子を育てるにあたり時流はおさえておこうというような軽い気持ちで読みました。わたし自身がキャリアをグローバル化するつもりは毛頭ないのですが。

小林美希「ルポ 職場流産――雇用崩壊後の妊娠・出産・育児」

妊娠初期の流産は、遺伝子異常などやむを得ないものだと一般に言われますが、実は無理な働き方によるものも相当ある、というルポです。この主題自体については、文献や人の発言を引用したりして熱心に書いてあるのですが、どうも読んでいると、妊娠出産関連…

ケース研究第308号 任意後見、面会交流の間接強制

・奥林潔「任意後見契約の実務とその利用の実情」 実情がつっこんで書いてあり、契約作成の際の留意点などもよく分かります。 ・磯雄俊明「面会交流事件と間接強制について」 実際の決定例をもとに、間接強制できる給付条項と解釈されるための要素を分析して…

家庭裁判月報第63巻第9号 子の監護者等の裁判例の傾向

松本哲弘(サンズイに弘)「子の引渡し・監護者指定に関する最近の裁判例の傾向について」 こういう基準があると言われるがそればかりで決められない、というコメントの繰り返しで、結局なんなの!と言いたいけど実際の実務がそういう状態なのだからしかたな…

勝間和代「勝間和代責任編集 すごい女子会」

心が弱っててミーハー的な気持ちで買ってしまった本。そういうのは読んでもここで書かないことも多いんだけど、意外とおもしろかったので。 西原とくらたまはいつもの主張でわたしはわりと同感。 小室淑恵さんについては、わたしはワークライフバランスとい…

桐野夏生「緑の毒」

クリニックの職員のつらい感じが、いろんな実例が思い浮かぶようで「あるある」と。全体的に桐野にしては普通・・。

河野裕子、永田和宏「たとへば君―四十年の恋歌」

「家族の歌 河野裕子の死を見つめた344日」のときより、若いときの歌があるので、夫婦の歴史…ときには有形力が出たり刃物が出たりおだやかでない時代もあったこともわかります。