弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

2016-01-01から1年間の記事一覧

藤田宙靖「裁判と法律学」

蟻川先生が何しゃべってんのかな!という興味だけで手にした本書。しかし対談はもちろんですが本文もエキサイティングでした。 制度準拠的思考、良識、眼差し、平明さ、飾り言葉、裁判と学説、「法は単なる所与ではなく、つねに課題である。」、正義ではなく…

加藤新太郎ほか「裁判官が説く民事裁判実務の重要論点 家事・人事編」

本書の位置付け的に当然ですが、基本的で当然のことが書いてあるだけでした。唯一、不貞相手に対する慰謝料の消滅時効の起算点(不貞終了と離婚に時間差がある場合)について妙に厚く書かれています(100~104頁)。

門口正人ら「訴訟の技能」

門口本2冊。「民事裁判の要領」は連載も読んでたのでまあ特にでしたが、「訴訟の技能」、1ページ1行目から「裁判は、闘争である。」とか、中村節がたまらない。まずはすべて信じてみる、おおらかに、ピンチのときほど楽しむ。などなど。たしかに私も先日…

判例時報2310号 特別縁故者、司法書士と弁護士法

・大阪高裁平成28年3月2日決定 身の回りの世話をしてきた近隣の知人と親族後見人について、特別縁故者であることを否定した原審判を変更して、各500万円を認めた高裁決定です。 ・名古屋高裁金沢支部平成27年11月25日判決 司法書士代理人がした…

判例時報2309号 専門的知見、面会と親権

・「専門的知見獲得のための工夫 座談会方式の経験から」 医療訴訟で鑑定がポシャって私的意見書を出した医師らと被告医師との座談会方式で心証を得たという事例の紹介やパネルです。 ・千葉家裁松戸支部平成28年3月29日判決 前に話題になっていたかと…

判例時報2308号 業務起因性

名古屋高裁平成28年4月21日判決 バス運転手の自殺について業務起因性を否定した原判決を取り消してこれを認めた高裁判決です。地裁も高裁も前提事実はそんなに変わらないのですが、精神的負荷の程度についての結論が違ってきています。

金融法務事情2055号 時効完成後の一部弁済と時効援用

浜松簡裁平成28年6月6日判決 時効完成後の一部弁済があっても時効援用について信義則に反しないという裁判例です。解説では債権者の対応がすごく問題であったという書きぶりですが実際これくらいはごく普通に行われている程度のことなので、一部弁済しち…

判例タイムズ1429号 養育費、不貞慰謝料と非免責債権

・東京高裁平成28年1月29日決定 義務者が自身の収入減少、相手方の収入増加を理由に申し立てた養育費減額調停中に失職し、雇用保険を受給して求職しつつも再就職できないという事情を前提に、義務者の稼働能力をセンサスによって認定した原審を取り消し…

加藤陽子「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」

帯の鶴見俊輔氏の評で「目がさめるほどおもしろかった。こんな本がつくれるのか? この本を読む日本人がたくさんいるのか?」とあるのが、まさにそのとおりで、とにかく日本人なら!読んで知って考えてほしい歴史です。

塩田武士「罪の声」

珍しくこういうのを。自分に酔った男調すぎたり、ソードマスターヤマトばりのムリヤリな謎解きだったり、そこまでしなくていいからというくらいの細かすぎて余白がない伏線回収だったり、という私がイヤに思うポイントはなくってよかったです。こういうタイ…

遙洋子「私はこうしてストーカーに殺されずにすんだ」

著者の激しい実体験からの教訓など。

ケース研究327号 ハーグ条約、子の意思、増減額

・「「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」(ハーグ条約)における外務省の業務」 特に、執行現場における子の利益について。回復力や適応力の促進という視点。 ・「家事調停における対話促進スキルの適合性」 参考文献リストも。 ・「家事調停に…

南直哉・来住英俊「禅と福音 仏教とキリスト教の対話」

急にkindleなしで数時間過ごすことになったときとっさにつかんだこれ。帯に、「輪廻や復活は本当にあるのか、三位一体は矛盾ではないか、無我ならば倫理の責任主体はどうなるのか」なんて、ぐっとくるじゃないですか! 南さんは最初っからこりゃ変わり者だな…

村木厚子、秋山訓子編「女性官僚という生き方」

必要に迫られないとそこまで跳躍できないような超高密度な働き方って現実にあるんです。それをわたしは知ったなあとつくづく思うこのごろ(ごめんなさい自慢です)。それがどんなにどんなにかって、見せてあげたいくらいだけど、言ってもそれだけじゃ伝わら…

LAZAK編「ヘイトスピーチはどこまで規制できるか」

会務の関係でいただいたので読みました。わいせつ表現規制との対比とか、なるほどって感じです。

金融法務事情2051号 Death Law

座談会「Death Law(デス・ロー)をめぐる金融実務の諸問題」 デス・ローなんてまとまるとかっこいいみたいですが、要は後見と相続です。 寄与について、報いることの是非とそれが消極のために泣いている無数の当事者のジレンマ! 嫁の踏んだり蹴ったり状態。…

渡辺和子「強く、しなやかに」

そういえばここには書いていないけど、「置かれた場所で咲きなさい」なども読んでました。もともとこの言葉は、ヒラリークリントンが大統領選に敗れて、オバマのもとで国務長官を務めるときに引用していたのが印象に残っています。 この方が鬱病をわずらい入…

判例タイムズ1427号 婚費減額

名古屋高裁平成28年2月19日決定 調停成立後に他女とのあいだに子が出生したことを理由とする婚姻費用減額申立につき、婚姻費用減額は不貞行為を助長追認するも同然で信義則に反するとして却下した原審判を取り消して、減額を認めた高裁決定です。

伊藤彩子「仕事は行動がすべて」、平田静子「そういえば、いつも目の前のことだけやってきた」、大瀧純子「女、今日も仕事する」

なんと2ヶ月近く放置してしまいました! 新生児育児中も副会長激務中もそんなことなかったのにいったいどうしたのか、われながら謎です。ここを放置したからといってなにも読んでなかったわけではなくて、なにかを読むこととそれをブログにアップすることと…

服部みれい「わたしらしく働く!」

これも働く女性一代記ものですね。読んだ時期は上の3冊とはズレてました。マッチョさはないというか、編集者時代の働き方はマッチョかもだけど精神性は違うところにありそうで、不思議ちゃん系とでもいおうか。

E.A.パーリー「弁護の技術と倫理 弁護の道の七燈」

先に読んだ夫が一人一冊と言って私にも買ってくれて、折り目と傍線だらけになって座右コーナー入りの本書です。いままた開いてみたらしばし読みふけってしまった。引用したいところがたくさんあるけど時間がないので、みんな読んで! あと、解説で法曹人口に…

室井佑月「息子ってヤツは」

まだ見ぬ道ですが、すっごく身につまされる箇所がいくつかありました。

村田沙耶香「コンビニ人間」

まあ普通に読みやすいブンガクじゃない?という程度に思いつつ、書評をいろいろ読んでみると、「普通」に抗う系の既存の作品と違って主人公が「普通」を内包していないことが特異というような指摘になるほどと思いました。といいつつ神林とかそういうコンセ…

論究ジュリスト2016年夏号 非訟事件

研究会 非訟事件手続法 座談会の最終回。抗告状の送付について規則がチグハグになっていることなど。

判例タイムズ1425号 介護事故

「医療・介護施設における高齢者の事故についての損害賠償請求に係る諸問題」

NBL1079号 口頭議論とか

・企業訴訟における訴訟活動(下) 説明会、ディベート型審理など。このごろ口頭議論がトピックですが、記録化、心証の引き継ぎができないこと、代理人による悪用、やっても役に立たなかった例など。調書異議をするくらいであってもいいと! この座談会を読…

髙橋大輔「漂流の島」

書評いろいろ出ていましたが、これは広く読まれてほしい! 必読書と思います。 漂流民を負う調査や探検自体の魅力もさることながら、流木で船を作ったり、米を積んだ船が漂着したりそれが芽を吹いたり!という鳥島生活での奇跡っぷりと二重写しになって、「…

高山文彦「生き抜け、その日のために-長崎の被差別部落とキリシタン」

「水平社」の副産物と思われる本書。長崎…中でも浦上。部落、キリシタン、被爆。重いテーマを3つ寄せたもので掘り下げと求心力はいまいちな感じがしつつ、うなりながら読んだのでした。 いき

蟻川恒正「尊厳と身分 憲法的思惟と「日本」という問題」

裁判例やほかの人の立場を批判するとき、相手が謙虚さを欠くという言い方をする人は、その人自身にとって謙虚さが課題(要はご同類)ってことだよなとこのごろ考えていて、あと、事件記録を見ないで判決だけ読んでする批判はどうしても限界があるって法曹で…

NBL1077号 企業訴訟

「企業訴訟における訴訟活動」 専門部の功罪、「裁判官による類型化やインプリンティングを排することを考えた訴訟活動」、ディベート型審理(口頭議論)は第一に裁判所が対象を理解することで第二に争点についての意見交換、中間命題について、回顧的判断と…