弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

2006-04-01から1ヶ月間の記事一覧

判例時報1920号 相当程度の可能性認容例

東京地裁八王子支部平成17年1月31日判決 褥瘡患者(92歳)に対する適切な栄養管理・感染症対策を怠った過失を認めたが、死亡(喀痰による窒息死)との因果関係を否定し、「相当程度の可能性」は認めた事例。認容額は慰謝料200万+弁護士費用30万…

伊坂幸太郎「終末のフール」

小惑星の衝突による人類滅亡をひかえているという設定の連作短編集。 というと、新井素子「ひとめあなたに…」みたいですが、「ひとめあなたに…」では衝突まで1週間だったのに対して、ここでは衝突まで3年、しかも発表から5年経過時点、というひねった時期…

加藤良夫「患者側弁護士のための実践医師尋問」日本評論社

ふれあい企画から出されていてこのごろは入手できなかったものの復刊です。 尋問例の掲載部分が多く、読むのにあまり時間はかかりませんので、この道の者としては読んでおくべきでしょう。

家庭裁判月報第58巻第4号 子の監護者指定・引渡

子の監護者指定・引渡に関する高裁決定が4つ掲載されています。 中でも、仙台高裁秋田支部平成17年6月2日決定。 「別居中の夫婦のうちの一方配偶者甲が公然かつ平穏に子をその監護下に置き、監護を継続していたにもかかわらず、他方配偶者乙が子を無断…

判例タイムズ1202号 鼎談・サブリース

ダブル加藤の鼎談は松岡久和教授がゲストで、サブリース契約について。 サブリースの賃料減額請求の問題等について考えるとき、『損害の公平な分担』なんてことを枕詞にしがちな気がしますが、一方当事者がリスクテイクした以上は『予想外の事態から生じる損…

判例時報1919号 低髄

福岡地裁行橋支部平成17年2月22日判決 交通事故による低髄液圧症候群発症の損害賠償を認めた事例です。交通事故と低髄の因果関係を認めた初めての判断事例とのこと。岡口裁判官の判決です。 原告は大学卒業後半年ほど就職したものの母の看病のため仕事…

司馬遼太郎「翔ぶが如く」

去年の12月25日から始めてやっと読了。 「竜馬がゆく」「燃えよ剣」「世に棲む日々」と読んで「翔ぶが如く」ときたのは、冒頭に出てくる川路とかが知らない人で興味が湧かなかったのと、ぼやけた感じの活字の二段組みで読みにくそうと敬遠して後回しにな…

アーシュラ・K・ル=グウィン「なつかしく謎めいて」

「ゲド戦記」のひとです。これは、次元間旅行で訪れた15の別次元の紀行文というスタイルのファンタジー。しゃべらない人々、野蛮な人々、夢(寝てるときの)を共有する人々などのいる世界。 なんかすらすらと読めないのは、訳文が硬い、上手くないんじゃな…

小林よしのり「目の玉日記」

白内障で失明寸前だったそうです。悪化しているのに放置しまくるさまがすごいです。自覚症状を放置しないようにしなくては、という素朴な感想。

判例時報1918号 聾学校内暴力

神戸地裁平成17年11月11日判決 県立聾学校の生徒(ダウン症)が教師から暴行を受けて重篤な心身の症状を呈したことにつき県に対する損害賠償請求が認容された事例。 暴行自体は、打撲傷等をもたらす程度のものでしたが、被害者の特性もあり頑固なチッ…

家庭裁判月報第58巻第3号 成年後見

「社会福祉士の成年後見制度への取組み」金川洋 社会福祉士も後見人の給源なのですね。 「法曹関係の方とお話をすると福祉分野のことについてご存じないことに驚くことがある。」という書き出しです(「それを非難するわけではない。」と続いています)。な…

判例タイムズ1200号 市民・メディアと民事裁判

「市民・メディアと民事裁判」東京地裁判事 瀬木比呂志 予防法学の重要性。最低限教えるべきこととして、たとえば、人に名前を貸したりすれば必ず何かの法的責任を問われるとか、もうけ話は危険であるとかの事柄が挙げられています。ほんとにそのとおりだと…

名称変更

新年度を機に名称を変更しました。

姫野カオルコ「ハルカ・エイティ」

著者にとって3回目の直木賞候補作。 ということを、はっきり認識しないまま読み始めたのですが、なんか賞を意識してる?と、ちゃんと感じました。 直木賞、ほんとは「ツ、イ、ラ、ク」でとれてるべきだったのですが、こんなにおじいちゃん向けみたいにお行…