弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

2010-01-01から1年間の記事一覧

2010年

ここでは書いていませんでしたが、2010年は4月に出産し、その前後ほとんど休まず業務を続け、11月までは子連れ出勤で事務所内養育してきたというハードな年でした。ここの更新は必然的にペースダウンし、年末はとくに余裕がなく、読んでも更新してい…

判例タイムズ1332号 介護費用

大阪地裁平成21年2月16日 症状固定後の介護費用日額8000円を主張し、認容は6000円です。判決文から被害者は介護保険利用中とわかります。 だからなんだというのは、あえて書きません。パンドラの箱です。

家庭裁判月報第62巻第12号 障害ある母への子の引渡

東京家裁平成22年5月25日決定 父からの子の監護者指定申立に対し、母を監護者と定めた事例です。父は、母にはある障害があり、子にもその障害特有の行動が見られるとして、子を母が監護するのは不適格と主張しましたが、裁判所は、状態が安定しているこ…

角田光代、橋本由起子「林芙美子 女のひとり旅」

林芙美子の文章と、それにまつわる風景などの写真。林邸が間取りや室内の写真など出ているのがよかった。

沢木耕太郎「壇」

「火宅の人」を読んでからの課題図書をようやく。最後の手紙のくだりがすごい。名作。

石川直樹「全ての装備を知恵に置き換えること」

これも駅の書店でゆきずりで。自己陶酔っぽいのだったらやだなと思ったけど、そうではなく良い感じのでした。

谷本ももこ「大学を出ていない大学のセンセイ」

札幌市の保育園の園長として長年勤めた著者が大学教員となって・・という本。なかに、保育園だよりの延長のように執筆したというくだりがあったと思うけど、良くも悪くもそういう素朴な感じ。保育の現場の大変そうなことや大学教育現場の大変そうなこと、ど…

マイケルベンソン「ファー・アウト―銀河系から130億光年のかなたへ」

ページをめくるごとに遠くなる構成、美しいです。

穂村弘「絶叫委員会」

アタマ休めに。ふつうに笑えました。

カーマイン・ガロ「スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則」

話題の本、たしかに職業がら、いわゆるプレゼンに限らず人に何かを説明する機会は多いわけで、読んでおくとよいと思いました。法律ネタで講演するときに応用するのは難しいかもと思いつつ、プレゼンしてみたくなりました。

本多孝好「at Home」

これもそう。こういう、思考が自分の中だけで完結して、自分的に一貫した行動をとる人物像、を好きそうな人っているよなーと思いました。というのはたとえば、娘が学校で男の子を殴ったというので男の子と親が乗り込んできたときに、わけも聞かずに娘を殴っ…

田村裕「ホームレス中学生」

これも空港の書店で、どんなにハードル下げて探してもどうしても読めそうな本がなくてやけくそで買ったのですが、売れた本なだけあるおもしろさはありました。

小川洋子「原稿零枚日記」

駅の書店で時間に追われて選んだときに、嘘日記じゃないよね?と内容を確認したはずなのに見誤った!嘘日記でした。運動会荒らしとか、部屋の間取りの再現がドツボにはまるとか、内向的で自虐的で被害妄想的な心理描写、こういうのつくづく苦手です。

山崎武也「弁護士に依頼する前に読む本」

なんじゃこりゃ、という感じの書き散らかした本でした。おじいちゃん弁護士が若い弁護士にうんちく垂れるみたいな内容だけど(だから決してユーザーむけではない)、でもこの著者は弁護士じゃないし。

江國香織「抱擁、あるいはライスには塩を」

各新聞雑誌の書評でべた褒めですね。よみごたえあってよかったです。でもいつもながら、こういうラストシーンのありかたを、是として書いているのか、必ずしもそうではないのか、はかりかねます。涼子みたいな健全さが、本当ならこうありたいのか、平凡で退…

東京弁護士会弁護士研修センター運営委員会「離婚事件の実務」

基本をさらうのによい内容です。保護命令についての裁判官講演が大胆です。

二弁フロンティア2010年12月号

「成年後見座談会後編」 後見人の権限の限界とか実務で悩むことについて前後編とも参考になります。後編では東京家裁が2010年10月に公表した(といってもWEB上では出ていないようです)「成年後見人等の報酬額のめやす」が掲載されています。 (む…

家庭裁判月報第62巻第11号 婚姻費用について

・「婚姻費用分担事件の審理 手続と裁判例の検討」 大阪高裁部総括判事による検討です。大阪高裁管内の未公刊裁判例も多く紹介されており、算定表の副読本として要チェックです。論点としては、婚姻関係が破綻している場合に婚費分担義務を軽減すべきかどう…

大橋鎭子「「暮しの手帖」とわたし」

著者は暮らしの手帖を立ち上げた人です。女性の自伝好きごころに引っかかったので読んだらやはりよかった。パワフルですごい。続くことになってるけどほんとに続きを待ってます。

伊坂幸太郎「マリアビートル」

おもしろかった。このところいまいちなのが続いたので買わないかと思ってたくらいだったのに。軽妙でおもしろい中にちょっといいところがあるというバランスが戻っている。いまいちなときは主張が前に出すぎている感じなので。その場の悲しみを少しだけ持ち…

吉本ばなな「ごはんのことばかり100話とちょっと」

好きな作家ってわけじゃないのになんとなく。自分の身の回りのことが特別に素晴らしいということをあまり大げさに言いすぎるのがやっぱり気になりこういところが好きじゃないんだけど、たまにおおって思う描写がある。今回は、人を雇うということについて書…

家庭裁判月報第62巻第10号 超過婚費、年金分割、成年後見

・大阪高裁平成21年9月4日決定 当事者が任意に払っていた婚姻費用が算定表以上の額であっても、その額が著しく相当性を欠くものでない限り、算定表からの超過分を財産分与の前渡しとして評価しない。年金分割の按分割合は特別の事情がない限り0.5であ…

判例タイムズ1330号 医療訴訟

「医事関係訴訟における審理手続の現状と課題(上)」 札幌医療事故問題研究会のMLでも話題になってますがたしかにいろいろと言いたいことがありますね。 どうでもいいですが、東京地裁村田裁判官「東京地裁医療集中部における医療訴訟の取り扱いについて…

桐野夏生「優しいおとな」

いつもの、人間の嫌〜な部分を掘り下げるところがなくて違う感じ。新聞連載だからライトなのかしら。最後の手紙であまりに多くのことを説明しすぎてる。

サイモン・シン「ビッグバン宇宙論」

棒と井戸があればそれだけで地球と太陽との距離はわかるんですって。ハッブル写真集のほわーっとした不思議気分の続きで読んだんだけど、棒と井戸のくだりでなんか、地面と宇宙はつながってるんだなーと現実に戻された感じ。ビッグバン仮説と永遠宇宙仮説の…

山本文緒、伊藤理佐「ひとり上手な結婚」

そうそう!と思いつつ楽しく読みました。お金の相談の項で伊藤さんの漫画にあった「開放感!」というのは個人的にすっっごく同意。愚痴糾弾系ではない読後感のよさもよいです。

東浩紀、宮台真司「父として考える」

この本と関係あるようなないような雑感だけども、子どもってこうとか子どもがいる生活はこうとか子どもを持つこととはそもそも!とか語る言葉はそこらじゅうにあるけど、これって言われただけでは実感しようもないことで、いくら言葉を尽くしても体験して知…

家庭裁判月報62巻8号 親権喪失

田中智子「親権喪失宣告等事件の実情に関する考察」 事例一覧や分析など詳細。東京高裁決定に実務が盲従して第三者からの監護者指定申立が門前払いにあうとすれば、親権喪失申立も視野に入れなくてはならない場面も出てくるかも。

判例タイムズ1326号 素因減額

森健二「交通事故損害賠償における『あるがまま』」 素因減額について判例法理や、その射程の及んでない部分について検討しています。だいたい知ってるつもりでいても、事件処理を重ねるうちに安易にながれがちになるので、おさらい重要です。

石川順子・谷直樹編「患者のための医療法律相談」

患者のための医療法律相談―よりよい医療を実現するために (弁護士の知恵)作者: 石川順子,谷直樹出版社/メーカー: 法学書院発売日: 2010/09メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る執筆参加した本ができました。 谷直樹先生のブログより 共同編集…