弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

2005-01-01から1年間の記事一覧

谷原誠「思いどおりに他人を動かす交渉・説得の技術」

こういう弁護士本をよく読む方ですが、マニュアルとして何かを得ることを期待しているわけではなく…自分の経験から漠然と思っていたことがうまく言語化されている場合など、出来る同業者と話し込んだ後のような良さがあります。

判例時報1909号 ネットオークションと隠れた瑕疵

「東京地裁平成16年4月15日判決 インターネットを利用したオークション取引で売買された中古自動車に民法570条所定の「隠レタル瑕疵」が認められた事例」 一審が瑕疵と認めず、控訴審で瑕疵と認められた事例です。双方本人訴訟だったようです。また…

家庭裁判月報57巻12号 離婚当事者と法人

「那覇家H16.9.21 医療法人の代表者理事長である夫に対し、妻が婚姻費用の分担を求めた事案において、同法人は、夫により設立され、自ら理事長となって業務を総理していることからすると、同法人の財産は、現在、実質的に夫に帰属し、最終的にも夫が…

東野圭吾「容疑者Xの献身」

このミス1位ということで読んでみました。 でも、以前、「秘密」のことを触れたように、やはりこの方とは相性が合わないのですね…。ここでは自粛しますが、もし誰か、読んでしっくりしなかった方がいたら、その方と語り合いたい気持ちです。

司馬遼太郎「世に棲む日々」

この2年以上、司馬遼太郎を読み続けています。「竜馬がゆく」、「坂の上の雲」、「菜の花の沖」、「燃えよ剣」ときました。「世に棲む日々」、何ヶ月もかけて少しずつ読み進みやっと読了。 革命を始める人、進める人、後始末をする人という3種類の人間につ…

判例タイムズ1191号 医事訴訟@千葉

「千葉県医事関係裁判運営委員会」 1年以上前に開催されたものの報告です。 専門委員についての議論。実際に専門委員を経験された医師から、期日で説明した内容の報告をされていましたが、これではほとんど鑑定なのではと思いました。他の医師の発言でも、…

判例タイムズ1190号 専門委員

「大阪地裁における専門委員制度等の運用の実際」 大阪地裁の医療事件の専門委員関与の実例として、XP読影のアンケート方式の鑑定をするにあたって、専門委員にダミーXPの選択をしてもらったという事例。こういうのには専門委員は良いでしょう。

銀色夏生「庭ができました」

独身時代の都会的な暮らしから、本当に凄い境地にきましたね。 そこらじゅうに石とか貝が敷き詰められているのとか、壁の色が全部違うのとか、傘立てのツボにまで顔が描いてあるのとか、とにかく細部まで思い通りの空間。と、思い通りにならない植物と。

竹内一郎「人は見た目が9割」

タイトルが全てで、あとは飲みながらする話しのような内容。 著者の専門の演劇と漫画の表現論に流れすぎ。マンガのコマ割りのこととかなんて、広い意味で視覚に関するという共通性があるんでしょうけど、人の見た目というテーマには全然関係ないんじゃないん…

小川洋子「博士の愛した数式」

この秋に急逝された、色々なことを教えていただきに仕事場によくお邪魔していた、ある先生を、「博士」のイメージとして読みました。 仕事上で頻繁にお目にかかっていたお相手でも、病や死という事柄においては遠くて、内情をうかがい知ることもできず、亡く…

ジュリスト1303号 フランス家族法・登記

「フランス家族法におけるグルーバリゼーションの現れ」 フランス家族法がグローバリゼーション化により変容されている、特に家族の氏、離婚、親子関係、とのことです。もちろん私にはよくわかりませんが、大きい影響のようです。 日本の家族法も、今後どう…

判例時報1907号 裁判官像・紛セ示談

「司法制度改革と裁判官」 裁判を野球になぞらえた表現で、何時間かかるかわからなくてもとにかく9回で終わるということがわかる野球のように裁判も全体の進行がわかるように、また、途中の点差が当事者、観客にわかるように、という発言が印象的。 当事者…

←雑誌じゃなくて新聞連載小説のことを…

宮部みゆき「名もなき毒」 いちばん楽しみに読んでいるもの。このところ青酸カリ殺人の軸に寄っていますが、職場の睡眠薬事件の女性がそろそろ何かやらかしそうですね。病院から住所を確認するといって自宅にかかってきた電話は、この女性がらみの伏線なのか…

内田樹「疲れすぎて眠れぬ夜のために」

ある方が著書で褒めていたので、はじめて読んでみました。 ちょっと口調がやわらかすぎるのが、むずむずします。 不愉快な人間関係に耐えることを美徳とみなして肯定してしまうと、不愉快な人間関係を再生産しつづけることになるというくだりとか、色々なと…

判例時報1906号 嫌煙

三柴丈典「わが国における嫌煙権訴訟の動向について下」 忘年会続きで、煙草の煙に遭遇することが普段より多く、洋服が臭くなるのが悩ましい時期です。

重松清「その日の前に」

ダ・ヴィンチで必読とされていたことと、「小学生日記」のhanae*さんが重松清好きと書いていたことがあって、読んでみました。 物語は良いと思いますが…物語の味わい以前に、男性キャラクターの持つ雰囲気がどうもダメで(妻と思い出の場所を巡るとかの行動…

判例タイムズ1189号 国際的子の奪い合い

瀬木判事の連載を興味深く読んでいます。 今回は「合議」について。 期日前の合議、機能してるのかな?という合議体(裁判長が「で、今日何するんだっけ」状態とか)ってありますね。「父母間の国際的な子の引渡紛争」子の奪取条約なんてあるのをはずかしな…

小倉顕ら編「ケース別遺言書作成マニュアル」新日本法規

しばらく前に買ってあったものを流し読み。遺言まわりの知識のおさらいになりました。 公証人の手による文例集として、使える文献と思います。

ジュリスト1302号 不動産・破産

このところ「不動産法セミナー」と「新破産法の基本構造と実務」の連載が楽しみ。どちらも深い議論がされていながら、対談形式で読みやすい。 今回の破産法のは、わりとマイナー気味というか細かめな制度の説明と実務の紹介など。

判例時報1905号 医事訴訟と素因

・「医療過誤訴訟における損害賠償と素因減額」塩崎勤 「過失と死亡との間に因果関係が認められない場合」の項で平成11年最判が紹介されているというのはどうなのでしょう? ・「裁判員制度批判」西野喜一 過激です。裁判員制度は国民動員の思想であって徴…

二弁フロンティア2005年12月号 民法の現代化

本号で最終回の池田真朗先生の民法の現代化についての講演連載、若手企業内弁護士のシンポジウム連載、どちらも興味深かったです。

「魔王」伊坂幸太郎

恐い。早く読み終えてすっきりしたく一気に読了。宮沢賢治がこんなに恐い感じで使われているとは。 私の好きな「疾中」の中の「眼にて云ふ」が、きれいに使われていました。 青空文庫から→宮沢賢治 疾中

「下流社会」三浦展

「希望格差社会」山田昌弘を読んだときのようなインパクトはありません。末尾の解決策がとってつけたようで、すわりが悪い感じ。コミュニケーション能力が乏しいと下流化する、という発想を中心にもっと掘り下げてあればと思いました。