弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

2009-01-01から1年間の記事一覧

2009年の9冊

読んで溜めてた本を過去日付で11記事分まとめて更新しました。12月は仕事も忙しかったんだけど、意外と読んでました。出張が多かったからかな。あとは、2009年の忘れがたい9冊。政治、歴史ものが多い、男みたいなラインナップだけど・・ 伊藤昌哉「…

増田英次「超一流弁護士が教える 「正しいこと」をする技術―コンプライアンス思考で、最短ルートで成功する」

弁護士が語るコンプライアンス本という見かけに反して、宮沢賢治的な思想(宮沢賢治への言及はないですが、これはあの詩句が念頭にあるのではないかと思い浮かぶところがいくつもあり、思い過ごしかもしれませんけど)が語られており、私は嫌いじゃないです…

外山滋比古「知的創造のヒント」

出先で読みながら、「思考の整理学」と間違って持ってきたか?と何度も見直してしまった。同じ内容です。と思ったら、アマゾンの書評でもそれで怒っている人がいた。同意。どうしてこんなに同じのを違う書名で出してるのか。

坪山鉄兆「図解刑務所のカラクリ」

ユーザー向け。新法後の刊行ですが、用語などはあまり新法対応してないです(軽屏禁とか)。

佐久間賢「交渉力入門」

これは怪物くんおすすめだったか。これを何度も読むというたぐいのものではなく、数あるなかのひとつとしてさっと読む価値はあるという程度。交渉主体が組織であるという前提をおいて、組織内の意思決定や伝達についても目配りしているのが、私がよく読む弁…

伊藤昌哉「自民党戦国史」

知の巨人か怪物くんのおすすめ(それにしても「ぼくらの頭脳の鍛え方」で出てた本をアマゾンで注文すると、ほかに紹介されてたのが「こんな商品も買ってます」で数珠つなぎで出てきてすごい)。すごくすごくおもしろかった。小泉が壊した自民党的なものとは…

清水真人「経済財政戦記―官邸主導小泉から安倍へ」

順番を間違って「首相の蹉跌」から読んでしまったけど(本当は、「官邸主導」「経済財政戦記」「首相の蹉跌」の順)、この人のはいまのとここれで全部。とってもよかったです。3冊すべておすすめ。それにしても、日本の将来がとても心配になります。次に書…

N.J.ゴールドスタイン,S.J.マーティン,R.B.チャルディーニ,安藤清志監訳,高橋紹子訳「影響力の武器 実践編―「イエス!」を引き出す50の秘訣」

50の秘訣、ということで秘訣が並べられてますが、わりとアメリカンな小ネタ集。時間があれば、という感じ。「影響力の武器」だけでいいと思う。

清水直「プロが語る企業再生ドラマ」

読み物としてもおもしろいし、実務にも参考になります(こころざし面、テクニック面とも)。おすすめ。

姫野カオルコ「もう私のことはわからないのだけれど」

感想書きづらい。わかる人にはぐっとくるのでしょう。

伊坂幸太郎「SOSの猿」

うーん、「あるキング」に引き続き好みじゃなかった。寓話感。物語のなかで物語論(物語には固有の力があるうんぬん)を正面から語られると引けるのです。作家は好きでも、作家の書く小説論は別に読みたくない(だから保坂和志の小説論のたぐいも読まない)。

桐野夏生「柔らかな頬」

未読のままだったけど「発火点」で何度か言及されていた(刊行当時の対談で)ので、掘り出して読んでみました。怖いは怖いけど、最近のの方が怖いなと。

土門拳「古寺を訪ねて東へ西へ」

しばらく前、この表紙に出てる滋賀県湖北の向源寺十一面観音像を見てきました。美術館なんかの展示のように照明などもっとうまいことなってればというのが残念でしたが、その美しさははるばる見にいったかいがありました。

村田守弘、加本亘「弁護士のための租税法」

「弁護士目線での租税法」ということですが、本体部分はまあ普通というか、用語の説明なので、ほかのどの本でもこんなもんだろうという感じ。ただ、「第1章弁護士が税を理解するための出発点」「第8章租税判例の読み方/弁護士の目線」と、あとは「第9章…

清水真人「官邸主導―小泉純一郎の革命」

「首相の蹉跌」から遡って。おもしろい! いまの政治状況をあわせ鑑みると日本の将来がたいへん心配になります。あとなんか、与謝野氏の善玉な書かれっぷりが際だっていて、思わず、日本を救うのは与謝野氏しかいないんじゃないかという気分になります。次は…

秋武憲一,岡健太郎「離婚調停・離婚訴訟 (リーガル・プログレッシブ・シリーズ)」

これも同様に流し読み。東京家裁実務の立場から様々な論点が詳しく書かれており、これも必携です。実際には、スタンダードに達しない運用に遭う場面というのはままあり、そういうときの軌道修正を求めるのに説得力ありそうです。これと判タ別冊の「人事訴訟…

野村剛司、新宅正人、石川貴康「破産管財実践マニュアル」

通読とまではいかないけど、業務の中で気になってる論点を拾いながら流し読み。実務的で完成度の高い良い本で、必携だと思います。特に公租公課の扱いなどは、詳しく書かれていた「破産管財手続の運用と書式」をさらに補う詳しい内容。最後の座談会が志ある…

家庭裁判月報第61巻第11号 子の福祉、直接強制

・「家庭裁判所調査官による「子の福祉」に関する調査 司法心理学の視点から」 調査官が「子の福祉」をどう見ているかがよくわかり、参考になります。 ・東京地裁立川支部平成21年4月28日決定 子の引渡の直接強制についての、執行官の処分に対する執行…

立花隆・佐藤優「ぼくらの頭脳の鍛え方」

これ↑には帯がついてないのが残念。帯では、ふたりとも魔の瞬間みたいな気の抜けた立ち姿がいい。本棚の前に座ってる写真の両手の感じもいい。マサルさんが小動物が好きとかいいつつ、挙げた小動物にハムスターが入っていないのが残念。飼ったことないのかし…

NBL915号 動産売買先取特権の物上代位

中田朋子「動産売買先取特権の物上代位に基づく債権差押手続の実務」 実務的でわかりやすくまとまっててとても良かったです。取り立てたときの領収書の書き方まであるのが、裁判所サイドが著すものとひとあじ違います。必読。

判例時報2050号 人訴と移送

大坂高裁平成21年3月30日決定 夫が単身赴任先で提訴した離婚訴訟について、妻が求めた従前の住居地への移送を却下した原決定を取り消し、移送を認めた決定です。夫の住所地ということで形式的には管轄があるわけですが、単身赴任先で事件との関係がない…

滝井繁男「最高裁判所は変わったか―一裁判官の自己検証」

すごく勉強になるので実務家は絶対読んだらいいと思います。

清水真人「首相の蹉跌―ポスト小泉 権力の黄昏」

選挙前にでてた本ですが、いま読んでも、というか近未来の状況を知ったいま読んでこそおもしろいように思いました。まぼろしの大連立の局面でいま話題の斉藤次郎氏が登場していて、なるほどと。政治ものは人物の間合いのとりかたや腹の使いかたなどの描写が…

中村久瑠美「あなた、それでも裁判官?」

スリリングであっというまに読んでしまいました。すごい話です。しかし実にしみじみ思うのは、変な男というのは地位があったりして傍目にはよさげな層にも、ほんとに本当に本当にたくさんいて、暴力までいかなくてもありえないマザコンとか、それはもう驚く…

向井万起男「謎の1セント硬貨 真実は細部に宿るinUSA」

私が買ったのじゃないので、ついで読みですが、ふーんへーとそれなりにおもしろく、しかしやっぱ私は野球ほかプロスポーツがあまりに好きで記録とかに喜びをおぼえちゃう人とは親密なおつきあいはできないわと思いつつ読みました(本書のテーマと関係ないで…

桐野夏生「発火点」

松浦理英子とのは10年前の古い対談で残念。男性とは対話があまり成り立ってないような・・重松は案の定ビミョー。斎藤環なんて自分の言いたいこと言って帰っただけみたい。柳美里は・・このあいだ「G2」で読んでいやーな感じがしたけど、あれも闇をさぐ…

マルガレーテ ブーバー=ノイマン「スターリンとヒットラーの軛のもとで―二つの全体主義」

週刊文春の書評(誰の担当分だったか忘れたけどほとんどこの本のあらすじをなぞっただけの書評でさぼり感があった)で見て買った本。大戦中にソ連に亡命していたドイツ人共産党員の著者が、ソ連で拘束され極寒のカザフスタン収容所に送られ、それからナチの…

判例タイムズ1301号 実親子関係

推定の及ばない嫡出子についてなど論文3本。外観説な訴訟実務と合意説な調停審判実務・・など、詳しいです。実親子関係の確定なんてDNAやれば楽勝、という素朴な考えでは、家裁に持ち込んだときに思わぬ壁にぶつかるかもしれない。

判例時報2048号 慰謝料増額事由

福島地裁郡山支部平成21年3月27日判決 寝たきりの後遺障害の慰謝料3000万円、事故後の隠蔽っぽい態度を慰謝料増額事由として挙げています。

古賀克重「集団訴訟実務マニュアル」

実践的でありかつ、志高く精神的にも鼓舞される内容です。私はいろいろ反省しました。弁護士が借金までして訴訟を続けるという事情が、すごくサラリと書いてあるけどそんなことあるんだと驚き・・。