弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

2006-08-01から1ヶ月間の記事一覧

竹内正浩「軍事遺産を歩く」

日本各地の日本軍の遺構についての記録。文庫書き下ろし。 函館山の要塞、松代の幻の天皇御座所とか、まだこんなのがあるのかと思いました。 とにかく写真が説得力あります。遺構が朽ちている様子をみると60年とはやはり長いのかあと思ったり…。もっと写真…

森絵都「風に舞いあがるビニールシート」

うーん、普通にうまいと思うんだけど、なんかちょっとよくわかんなかったです。 途中で明らかに落ちが読めて(たぶん隠してもおらず)、そして予想どおりにきっちり落とすスタイル、別に落ちが読めてもいいんだけど、いちいちそんなにちゃんと落とさなくて良…

ロジャー・フィッシャー&ダニエル・シャピロ「新ハーバード流交渉術」

ハーバード流交渉術において「感情」の問題をどのように取り扱うかを論じたものです。 たしかに「ハーバード流交渉術」はたいへんためになったのですが、こちらはどうでしょう。 なるほどなと思うところもたしかに多くあるのですが…、正解として示されている…

判例時報1932号 医療過誤と訴訟代理の有効性

・大阪地裁平成17年4月22日判決 低血糖を見逃し治療が遅れたこと等について責任が認められた事案、なのですが、本筋よりも次の判示に注目しました。 「被告らは、原告ら主張の原告太郎の症状からすると、訴訟委任の趣旨を理解できていたとは考えられず…

アーシュラ・K・ル=グウィン「ギフト」

ゲド戦記の人の新作、三部作の第一部です。 「ギフト」と呼ばれる超能力を受け継ぐ血筋のおはなし。 誰も冒険に行ったり旅立ったりはせず地味なんだけど…その地味さといえば、ゲドの「こわれた腕環」(こちらは手元にないので曖昧なイメージですが)の前半の…

判例タイムズ1212号 メタタグの記載と商標権

・大阪地裁平成17年12月8日判決 サイトのメタタグに他人の商標を記載したことに商標権侵害を認めた事案です。 争点はいくつかありますが、判タの解説ではメタタグの視認可能性を認めたというところに重点が置かれています。 メタタグによる商標権侵害を…

江國香織「スイートリトルライズ」

この人のでこれが一番好きかも。 いつもどおりおしゃれっぽく地に足がついてない感じがしつつ、病みが入ってるところがいい。 「人は守りたいものに向かって嘘をつく」ということ、よって、自分が何もかも正直に接せられる愛人よりも、自分に嘘をつかせる存…

判例タイムズ1211号 薬剤使用方法に関する過失と救命措置に関する過失の判断手法

・東京地裁平成16年4月27日判決 術後せん妄状態の患者にドルミカムを投与したところ呼吸抑制→低酸素性脳症となった事案。 主な争点として、①ドルミカムの適応外投与が注意義務違反か、②ドルミカムの投与量・方法の適否、③救命措置の適否。 ①について、…

半藤利一「昭和史戦後篇」

2ヶ月かかりました。 実際にこの時代を生きてきた世代の人に当たり前のことであっても、あとから生まれた者には学ばないとわからないわけです。前篇と合わせると重たい読みものですが、時間をつくってでも読んだらいいと思います。

宮部みゆき「ブレイブ・ストーリー」

夏休みの読書的に。 いちおう最後まで読んだんだけど、うーん、悪のり気味とすら思えるRPG仕掛けに食傷してしまいました。 このひとと東野は、売れてるけど良さがわからない二大作家。

判例時報1931号 弁護士預り金の被転付適格

・最高裁平成18年4月14日判決 法人の債務整理の弁護士預り金について、法人の債権者が差押命令及び転付命令を申し立てた事案。 原々審、原審とも被転付適格肯定。 最高裁は、「委任者の受任者に対する前払費用についての返還請求権は、当該委任事務の終…

ジュリスト1317号 民訴改正後10年

特集は「新しい時代の民事訴訟法」。 個々の論文まで読めなくても、冒頭の座談会は読んだら良いと思います。 山本克己先生は弁護士の質に対して厳しい調子です。「どうも今日は弁護士の悪口ばかり言っているようで、まずいのですが。」とおっしゃりつつ。 高…

家庭裁判月報第58巻第7号 子の引渡の直接強制

「子の引渡しの執行実務」 子の引渡の直接強制の可否について議論がありますが、すでに、東京地裁執行官室、大阪地裁執行官室では、直接強制肯定説となっているそうです。 東京地裁の平成17年の直接強制事例4件が取り上げられ、2件成功、2件執行不能と…

判例タイムズ1210号 一般的でない治療法の場合の説明義務2

・大阪地裁平成17年7月29日判決 平成12年、未破裂脳動脈瘤をラッピングしてコーティングする手術を受け死亡した事案。 手術適応については、本件で自然経過による危険とコーティング手術による危険は同程度であって、第一選択の治療法として一般的に…

判例時報1930号 一般的でない治療法の場合の説明義務

・東京地裁平成17年6月23日判決 患者は平成9年乳癌診断され、被告医師の提唱する「新免疫療法」を受けたが、平成16年死亡。 新免疫療法が一般的でない治療方法であることを認定。 医師が一般的でない治療方法を試みる場合には、一般的な治療方法につ…

華恵「本を読むわたし」

ISBN:4480816488:title hanae*改め華恵となって第1作。読書感想文を寄せ集めただけのものではなく、ちゃんと一連の読みものになっていて、取り上げられている本を知らなくても大丈夫。 今まだ中学生? 若いのに本当にきちんとしてます。すごいなあ。 「小学…