弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

2007-03-01から1ヶ月間の記事一覧

江國香織「ぬるい眠り」

これも「フィッシュストーリー」みたいに短編を集めただけのもの。 「災難の顛末」は太宰の「皮膚と心」っぽい。

伊坂幸太郎「フィッシュストーリー」

アマゾンで、伊坂マニアなら買うだろうっていう安直な本というようなレビューがあったけど、まあわりとそういう感じに短編を集めただけの本です。でも、こういうのも出してくれないと、短編がマボロシ化しても困るから、いいんじゃないでしょうか。

内田樹「下流志向」

売れてる本ですが、そのわりに(というのも変だけど)かなり難しい内容を含んでると思う。そして、かなり言い当ててると思う。この著者のは前に読んだのはピンとこなかったけど、これはかなりピンときた。 学問、労働を消費行動と対比して、両者の差異が「時…

姫野カオルコ「ああ正妻」

ああ正妻 「ひと呼んでミツコ」とか「ガラスの仮面の告白」とかその他多くの著作と同じ系譜の、「主張系」の作品でした。もういいよ、もうわかったよってくらい、いつもの主張です。この主張は、主張を共有する人は読んでそうそうと思うわけだけど、その主張…

豊島ミホ「檸檬のころ」

駅の本屋で物色中、目にとまり、姫野の「ツ・イ・ラ・ク」や「終業式」の学校描写部分のようなのが読みたい気持ちで購入。でも、これは今ほんとに学校に行ってる世代の人が読むためのもので、大人向けではないかんじ。 突然、司法試験受験生が出てきたのはあ…

山田昌弘、伊藤守「格差社会スパイラル」

「希望格差社会」の著者の新刊ということで。格差の存在、その理由の指摘を超えて、解決策を示そうとする試みです。 格差をもたらすのはコミュニケーション能力の差であるという主題で、これは三浦展「下流社会」と共通しています。 コミュニケーションが大…

判例時報1954号 ヘルペス脳炎

・名古屋高裁平成18年1月30日判決 1ヶ月検診時の児の症状からヘルペス脳炎を疑ってアシクロビルを投与すべきであったという判断です。 因果関係も問題となるところですが、救命可能性に関する統計資料については、治療薬であるアシクロビル普及以前の…

俵万智「愛する源氏物語」

和歌に秘められた心や、技巧的部分の解説(紫式部があえて下手に作ってたり、力をこめてたり)など、大変おもしろい読み物でした。源氏物語に対して絶賛モードじゃなく、ときに斜めから切っているのが良いところ。

判例タイムズ1228号 証人尋問

「立証活動としての証人尋問」 証人尋問の考え方や手法についての対談です。こういう対談は、体系書ではこぼれ落ちがちな端々の言葉に含蓄があって良いです。 個別戦で勝っても最終的に勝つとは限らないが、個別戦で勝たなければ最終的な勝ちもない、負け筋…

東京弁護士会相続・遺言研究部会編「実務家のための相続遺言の手引き」

「はしがき」の文章が、文章としてかなりおかしいのですが、本自体の内容は大丈夫でした。なんてことをいうとかなり失礼かもですが、何とも脱力感をおぼえるこの文章、手元にある方はぜひ見てみてほしいです。

家庭裁判月報第59巻第2号 相続放棄と特別縁故者・扶養的財産分与

・広島高裁岡山支部平成18年7月20日決定 相続放棄をした相続人を特別縁故者と認めて、相続財産を分与したものです。放棄の経緯は、存否不明の債権について執拗な請求を受けるおそれがあったためとのこと。こういう救い方があるのですね。 ・名古屋高裁…

大阪地方裁判所・大阪弁護士会新破産法検討プロジェクトチーム編「新破産法対応破産管財手続の運用と書式」

asin:4788207354 大阪地裁の本なので、手続面は他地域ではあまり参考にできないのですが、財団の管理・換価方法についてかなり行き届いた記載があり、改正法でややこしくなった租税債権や労働債権の扱いも詳しいので、備えておく価値があると思います。公課…

牛山隆信「秘境駅へ行こう!」

この著者はほんと変人です!(ほめてます) わざわざ辺鄙な駅に行ったり、無人の駅で寝てさえいます。 私はとりあえず室蘭本線の小幌にはこの夏にでも行ってみたいと思いました。

判例時報1953号 自殺物件と競売の現況調査等

・福岡地裁平成17年9月13日判決 競落したマンション居室が自殺物件だったことから執行官、評価人の注意義務違反を主張したものの棄却された事案。 執行官の注意義務についての平成9年最判のあてはめで、自殺という風評等がなかった以上は、自殺物件で…

ケース研究290号 パペット

このごろこんなのもとってます。 発達障害のぐ犯少年とパペット(ぬいぐるみ)を使ってコミュニケートしたケース報告など。アプローチの工夫が劇的に奏功しているケースです。