弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

2007-08-01から1ヶ月間の記事一覧

判例時報1970号 名誉毀損とやぶへび

東京地裁平成18年9月7日判決 名誉毀損で訴えられた被告が、その訴訟において、原告(弁護士)に関する不名誉な事実記載を含む陳述書を提出したことについて、争点と関連のある内容であって名誉毀損にあたらないとしたものです。原告は、自分が原告代理人…

半藤一利「日本のいちばん長い日」

ひとたびはじめたことを終わらせるのは何であっても簡単ではなく、勝ち目が無くなったから負けて終わったんだと自然な流れのように思っていましたが、事態をプロスペクティブにみていくといかに大変なことであったかよくわかります。

判例時報1969号 主張変更の許否

福岡高裁平成18年2月14日判決 測量作業をしていた原告が橋の欄干から転落した事故に関する国賠訴訟。原告が一審の途中で事故態様に関する主張を変更したことにつき、一審は、信義則(民訴法2条)に反して許されないとしましたが、本判決は、変更前後の…

上杉隆「官邸崩壊 安倍政権迷走の一年」

官邸崩壊 安倍政権迷走の一年 出たばかりの本です。安倍政権発足から参院選の結果が出たとこまで。鮮度高いです。小気味よいほどのダメっぷりをみせつけてくれて、ダメさがどのあたりに由来するかがわかるように思います。時局ものというにとどまらず失敗の…

魚住昭「野中広務 差別と権力」

差別を受けながら権力をのぼりつめた道程。純粋に立身出世伝としておもしろく読めます。最後の最後で勝負を避けたことに差別が影を落としているとしたら恐ろしいことです。

原武史「滝山コミューン一九七四」

すでに小学生のときから学校が苦手だったような3〜40代の人が読むと、苦手の正体を知ることができるかもしれません。自主性、自発性を強いられるのが苦痛でならなかったことなど、忘れていた小学校時代のイヤなことまで思い出し、漠然とイヤだったのがな…

福本邦雄「表舞台 裏舞台─福本邦雄回顧録」

もっともっと裏のことがあるだろうと思いますが、そこそこ裏の描写も出てきておもしろいです。語りに味があるのも良いところ。岸首相の往生際の悪さ、人気が落ちて悪い顔になっていった様子の描写や、総理をやめさせるのがいかに難しいかというくだり、いま…

魚住昭「特捜検察の闇」

[asin:4167656655:image:small] カブトデコム、安田弁護士事件などなど国策捜査の失敗例。国策捜査というあり方自体の問題と、捜査の内実がおそまつであることについて。事態を直視せず詐欺という枠組みに押し込んで失敗した例をみると、朝鮮総連事件はどう…

判例時報1967号 非合理的な死因贈与と錯誤

東京地裁平成18年7月6日判決 長年夫婦同然の関係にあった女性に対する不動産の死因贈与が公序良俗に反しないとされた事例、ということで紹介されていますが、それはわりとあたりまえのことで、この判例は上記判示のほかに、長女の自宅の敷地になっている…