弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

2015-01-01から1年間の記事一覧

堀川惠子「原爆供養塔 忘れられた遺骨の70年」

「教誨師」もそうだったのですが一読圧倒される本です。広島市ってもっとこういう、遺骨の特定とかそういうの頑張ってやってきたのかという勝手なイメージがあったのですが、40年ものあいだノートと骨箱の中の紙片の照合もしないで、帰るべき遺骨が帰らな…

判例時報2273号 内縁・面会交流

・東京地裁平成27年5月19日判決 内縁の夫の交通事故死につき内妻の扶養請求権侵害の損害(月額6万円として平均余命の2分の1の期間)と慰謝料500万円を認めた裁判例です。 ・仙台家裁平成27年8月7日審判 離婚後の面会交流審判申立につき、申立…

東京弁護士会親和全期会「こんなところでつまずかない!弁護士21のルール」

エレベータのボタンとか女子力とか、どんなこと書いてあるんだろと思わせる惹句がうまいですね。オーソドックスなんですけど、たしかに踏まえておきたいことが書いてあります。私も若いときに読んでいればと思ったポイントがいくつか。オススメです。 これと…

野尻千里「心臓外科医がキャリアを捨ててCEOになった理由」

39歳で心臓外科医からメーカー勤務に転身、41歳で結婚、42歳で出産(前日まで働き産後1週間で職場復帰)という自伝。ワオ、マッチョ! 私はこういうの大好物ですよ~~でも読む人を選ぶかも。オトコ社会であることを前提に、ルサンチマン風味なく現実…

判例時報2272号 和解無効、不貞

・東京高裁平成26年7月17日判決 原審での訴訟上の和解を無効として自判した判決です。和解期日後のfaxの内容など見ると、これで無効?しかも訴訟上の和解を?ええ~~~? ま、裁判長を見るとフーン、と… ・東京地裁平成27年2月3日判決 不貞行為…

判例時報2271号 相当程度の可能性、顛末報告、監護者指定

・広島高裁平成27年5月27日判決 特別老人ホーム入居者の肺血栓塞栓症による死亡につき、ワーファリンを処方していた配置医について、添付文書に従った凝固能検査等を行う注意義務違反を認めつつ因果関係は否定し、相当程度の可能性で300万円を認めた…

ジュリスト1487号 夫婦間の労働契約

東京地裁平成27年2月20日判決 被告(夫)は勤務弁護士で、原告(妻)を青色専業従事者として礼状送付、スケジュール管理などの労務の提供を受けていたところ、夫婦が別居し、妻が夫に未払賃金を請求した事件。判決は、労基法上の労働契約があるとして請…

判例タイムズ1417号 扶養料、AVM、特別縁故者

・札幌高裁平成26年7月2日決定 母から子に対する扶養料請求審判事件です。月額として原審9万→抗告審11万。基本的な考え方は同じながら、計算方法が相違するもの。 ・東京地裁平成25年8月8日判決 脳動静脈奇形(AVM)摘出術後の後遺障害につき…

判例時報2270号 交替監護・国際裁判管轄

・東京地裁平成27年1月29日判決 別居中の夫婦が子を1週間交替で監護していたところ、被告(妻)が交替監護の合意に違反して引き渡さなくなったとしてした慰謝料等請求が棄却された裁判例です。面会交流というを超えて1週間交替での監護であった状況が…

ケース研究324号 渉外家事・再婚と面会・調停に代わる審判・市民後見

本号は全体的に読みごたえがありました。・大谷美紀子「渉外家事事件について」外国人当事者の関わる家事事件について、どちらが正しいというわけではないがどうしてこうなのかを知っておくと役に立つ、というスタンスから特性がわかりやすく説明されていま…

判例時報2269号 遺産分割の錯誤無効・術後誤嚥窒息・自由診療と説明義務

・東京地裁平成27年4月22日判決 遺産の全容を知らないままにした遺産分割協議について錯誤無効と認めた裁判例です。 ・東京地裁平成26年9月11日判決 くも膜下出血術後の食事で蒸しパンを詰まらせ窒息して後遺障害を負った件につき、適切な食事介護…

論究ジュリスト2015年秋号 非訟事件、家事事件

・研究会 非訟事件手続法 ・特別座談会 家事事件の新たな展開に向けて 最高裁・第6回迅速化検証報告書を受けて 家事の方は特に、裁判官関与の充実、資料の相互開示、閲覧謄写、双方立会手続説明、調停に代わる審判、電話会議・テレビ会議についてなどなど、…

杉田成道「願わくは、鳩のごとくに」

妻なる人の気迫がスゴイです。医学生として出産し産後3日で授業に出て、年子で3人をとかスゴすぎ。そのあたり私も人にはスゴすぎと言われる部類でありつつ別にスゴイと言われるためにやってきてるわけじゃなくてこの方もナチュラルな道行きとしてそうなっ…

判例タイムズ1416号 調停に代わる審判、特別縁故、婚費減額、祭祀承継

・「家事事件における調停に代わる審判の活用について」 東京家裁における調停に代わる審判の活用例(合意型、欠席型、不一致型)など。 ・東京高裁平成26年5月21日決定 被相続人の従兄が、被相続人の親族の葬儀を被相続人の代わりに執り行ったり、害虫…

二弁フロンティア2015年11月号 内部公益通報、成年後見

・山口利昭「コンプライアンス実現のための内部(公益)通報のポイント」 ・東京三弁護士会合同研修会「成年後見実務の運用と諸課題」

二弁フロンティア2015年10月号 専門委員

・「専門委員制度アンケート結果報告書」を公表 医療関係訴訟における専門委員制度運用の現状と、代理人となる弁護士が注意すべき点について 専門委員制度アンケート結果報告書|第二東京弁護士会ひまわり 東京地裁医療集中部で行われている簡易鑑定的利用の…

判例時報2267号 婚姻費用、キャリーバッグ

・大阪高裁平成26年8月27日決定 子の私立学校における学費を考慮した婚姻費用算定例ですが、学費の加算にあたり、収入比按分ではなく等分処理しています。松本論文を敷衍して解説も詳しいので要参照。 ・東京地裁平成27年4月24日判決 駅構内でキャ…

判例時報2266号 面会交流

・東京高裁平成27年6月12日決定 DV事案の面会交流で直接交流を認めず、間接交流(2ヶ月に1回手紙を受け取る、4ヶ月に1回写真送付)のみとした高裁決定です。

判例タイムズ1415号 婚費減額

東京高裁平成26年11月26日決定 別居中の夫婦間の婚費が前審判で定められていたところ、夫の減収を理由とする減額申立を認めた原審判を取り消して差し戻した高裁決定です。「審判確定後の事情の変更による婚姻費用分担金の減額は、その審判が確定した当…

判例タイムズ1414号 相続と預貯金

「被相続人の生前に引き出された預貯金等をめぐる訴訟について」 被相続人の生前に引き出された預貯金をめぐる問題は、遺産分割とは別途に民事などでやるべきことになるわけですが、その法律構成、事実認定上の問題点など。

北海道新聞社「弁護士―北海道の人脈・事件・裁判 (1981年)」

弁護士―北海道の人脈・事件・裁判 (1981年)作者: 北海道新聞社出版社/メーカー: 北海道新聞社発売日: 1981/10メディア: ?この商品を含むブログ (1件) を見る鳴鐘社の「平成4年版北海道の弁護士」は当事務所の自慢の蔵書ですが、それよりさらに遡るコレ! 巻…

永田淳「評伝・河野裕子:たつぷりと真水を抱きて」

息子が自分の評伝を書く、若いころの日記(しかもセロテープで三辺をとめた袋とじも!)を読む、なんて、ヒョエーという感じ! さすが歌人一家…。北杜夫の「青年茂吉」を読んだときのこともちょっと思い出しましたが、息子→父と息子→母は関係性がまた違うも…

つんく「だから、生きる。」

このごろ軟派な本ばかり読んでるようですが! と見えて、こういうのって夫婦や親子で読んで感想を言い合うと、お互いの医療観や死生観がわかったりすりあわせが出来たりするのでけっこう良いなあと思うんですよ。読んだこと自体より、そういう副効用が大事だ…

又吉直樹「火花」、羽田圭介「スクラップ・アンド・ビルド」

自宅に文藝春秋があったので読んでみました。 「火花」は、田中慎弥や西村賢太のような昔っぽい、ニオイのしそうなブンガクですよね。オチがグロテスクであり、この終わり方である必然性はどうなのか。終わらせ方がわからなかったのでは、とは誰の選評だった…

綿矢りさ「ひらいて」

・語り手が自分の感情を自覚してないの禁止(頻出例:失ってみて初めて気付く大切さ) ・視野が狭くなって極端な行動とらせることで狂気やひたむきさを表現してブンガクっぽくするの禁止 ある人が書評で褒めてたので読んでしまったのだけど、芥川賞二作とこ…

判例時報2260号 面会交流

「子ども中心の面会交流論(原則的実施論批判)」 面会交流について原則的実施論といわれるような状況になるに至るまでの流れや、そのことの問題点を指摘するものです。 原則的実施論を「ドグマ」と呼びつつ、反面、FPIC関連のとある文章について「PA…

谷崎潤一郎「細雪」

初谷崎です。谷崎って…文学かと思い込んでたんだけど、これって全然、娯楽小説ですよね。実際そもそもそういうものとして書かれてますよね。文庫で上中下というボリュームですが寝食を忘れるいきおいで一気読みしてしまいました。文章の美しさ、姉妹達の人物…

二弁フロンティア2015年8・9月号 思わせぶり・ゴールデンルールズ

「裁判員裁判における検察官から見た弁護活動」 「思わせぶり冒陳」ってなるほどな〜と思ったのです。マサルさんも書いてるように… 佐藤優「獄中記」332頁 「一級の宣伝工作の場合、「答え」(こちらにとって都合のよいシナリオ)をこちらから提示しては…

判例時報2259号 相続放棄、不貞行為と準拠法

・福岡高裁平成27年2月16日決定 相続放棄の熟慮期間について、遺産に不動産があることの認識があっても、相続債務が存在することを知ったときを起算点として、相続放棄申立を却下した原審判を取り消してこれを受理した高裁決定です。 ・東京地裁平成2…

判例時報2257号 医師の説明義務

近藤昌昭・石川紘紹「医師の説明義務」 我妻学「近藤昌昭・石川紘紹「医師の説明義務」に関する若干のコメント」 医師の説明義務の根拠を患者の自己決定権に求める立場を「自己決定権説」と呼んで、重要なのは適切な医療行為という目的であって、患者の自己…