弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

2006-06-01から1ヶ月間の記事一覧

星野博美「のりたまと煙突」

「転がる香港に苔は生えない」の人です(これは読んだことないのですが)。 ショートエッセイ集、と聞くと、女性誌に見開き1頁で連載したのをまとめたようなものかなと偏見を持ちますがそうではなく、書き下ろしでショートエッセイが60コくらい、きちんと…

隈本邦彦「ナースが学ぶ「患者の権利」講座」

ナースが学ぶ「患者の権利」講座―アドボケイトになるための25の心得 著者の隈本先生からご恵贈いただきました。 医療従事者としてでなく記者としての体験から書かれていることもあってか、視点が医療界内部にとどまらず、専門職にとって普遍的な内容をもって…

家庭裁判月報第58巻第6号 推定相続人廃除

和歌山家裁平成16年11月30日審判、大阪高裁平成17年10月11日決定(抗告審) 申立人母から相手方長男に対する推定相続人廃除が認められた事案です。 挙げられている事情をかいつまんで… ・相手方は自らが局長を務める郵便局で申立人に無断で申立…

ジュリスト1314号 破産法対談・多数債務者関係

破産法の対談、今回は多数債務者関係、特に、配当額が残債権を超える場合の処理について。 破産法104条の規律を前提に、主債務者が破産し、連帯保証人が債権者に100のうち80弁済した場合、手続開始時現存額主義ですから、債権者は主債務者の破産手続…

C.S.ルイス「顔を持つまで」

「ナルニア国物語」の人です。 この人のは、「ナルニア」以外では「神学的SF」という不思議なジャンルの「沈黙の惑星を離れて〜マラカンドラ」等「別世界物語」三部作をずいぶん前に読んでいて、この「顔を持つまで(旧題「愛はあまりにも若く」)」は読み…

判例タイムズ1207号 最判・親権争い中の子の奪取

最高裁平成17年12月6日判決 妻と離婚係争中の夫が、妻が監護している2歳の子を連れ去った行為について、未成年者略取誘拐罪が成立するとしたものです。 以下、骨子を。 ・夫婦は別居中、子は当時2歳 ・子が祖母に連れられて保育園から帰宅中であった…

姫野カオルコ「受難」

ずっと前に姫野一気買いしたとき買っていたのですが、なんとなく読まずに残していました。 しかしなんで敬遠していたのか、人面瘡の古賀さんのつっこみのおかげでフランチェス子の痛々しさが中和されて(「人呼んでミツコ」や「喪失期」は痛すぎてちょっとと…

判例時報1926号 マンション管理員の労働時間

・東京地裁平成18年2月3日判決 仮眠時間の労働時間性について書いた流れで… マンション住み込み管理員の時間外手当請求について、不活動時間の労働時間性を否定したものです。 判決では、ビル警備員の仮眠時間を労働時間と認めた大星ビル最判を念頭に、…

半藤一利「昭和史」

年末あたりに買って半年以上かけて読み終わりました。司馬が書いてくれてたらなーなどと詮無いことを思いつつ。 終戦がたった60年前というのが、とても近い歴史と思えてならないのは、ここ何年か司馬ワールドにいて幕末あたりのことばかり読んでいるせいか…

川口順子「涙は女の武器じゃない」

こういうのだけじゃなくたとえばあえて別方向を挙げると中勘助「銀の匙」とかも含めて自伝が好きで、目につくと読むわけです。 これも特に思い入れもなく、ご経歴などよく知らずに読み始めたのですが、良かったです。林文子さんのときもそうですが、お礼を言…

岩井志麻子「黒い朝白い夜」

「−たちまち湿る、シマコが開く、私小説。」 帯より。 この人の普通の小説は読んだことが無くて、こういうのばっかり読んでいます。 編集者のジミーちゃんと結婚したと思っていたのですが、ジミーちゃんはどうしちゃったのでしょう。 邪気のない笑顔の漫画家…

判例タイムズ1206号 仮眠時間と労働時間

・東京高裁平成17年7月20日判決 ビル管理会社の警備員らが、仮眠時間等が労働時間にあたるとして未払賃金、付加金の支払いを求めた事案で、原審は仮眠時間の労働時間性を肯定して一部認容したのですが、これを変更し、労働時間性を否定した判決です。 …

江川卓「夢ワイン」

「神の雫」のついでというかんじで貸していただいて、読み始めたときはここには書くつもりはなかったのですが、読んでみると意外にけっこうおもしろかったです。 で、亜樹直「神の雫」 “神のワイン”を求めて2人の男が火花を散らす!という漫画。ワインうん…

ジュリスト1312号 破産における債権の優先順位

「新破産法の基本構造と実務第14回各種債権の優先順位」 今回も出ている、法制審で厚生労働省とか労働組合方面の人が“会社は賃金台帳作成義務があるから管財人は台帳により未払賃金を全て把握できるはず”と述べた、という話は各所で紹介されていますが、あ…

M・チクセントミハイ「楽しみの社会学」

こういう本は普通なら買わないので、何かで紹介されていたのをみたのだと思いますが、どこでみて何を期待して買ったのか思い出せません。 訳文の問題なのか読みにくいことと、すこしだけは「ふーん」と思うような箇所はあったのですが、そのほかは全体的につ…