弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

2017-01-01から1年間の記事一覧

判例時報2347号 医療訴訟、高裁

・藤山雅行「名古屋高裁医事関係訴訟検討委員会の活動状況と医事訴訟の課題」 「仮に実体的真実に合致する判決を水準の高い判決と仮定すると、医事訴訟の判決の水準は、通常の民事訴訟に比べてかなり低いのではないかと危惧される。」 そして、藤山裁判官流…

日本テレビ報道局天皇取材班「昭和最後の日 テレビ報道は何を伝えたか」

平成最後の日を前に、ということで家にあったので読みました。報道や取材のありかたをいろいろ正当化しているものの、こういうありさまがまさにマスコミの悪いところとしか思えず、共感できないままでした。時系列をなぞっているだけで深みはなく特におもし…

里見清一「見送ル」

読み途中も含めてコレ系を洋モノばかり読んできたのでたまに和モノも。 あまりエキセントリックだったり悲憤慷慨調や露悪的にすぎるものには触れたくないので冒険でしたが、これは文体が自分に酔った男調紙一重ながらそういう意味ではセーフで内容もごもっと…

判例時報2346号 代襲と特別受益

福岡高裁平成29年5月18日判決 贈与後の代襲と特別受益について消極説に立ちつつ特段の事情を認めた高裁判決です。

ケース研究330号 遺産分割

・二宮周平「遺産分割と預貯金」 ・長秀之「家族法と公証実務」 離婚届出を公正証書作成からある程度時間を経過した後の時期にする旨の記載について消極説と積極説。面会交流の違約損害賠償額の予定は消極。

Jerome Groopman MD「決められない患者たち」

「誰かをそのまま死なせてやることはとても簡単だが、誰かを救い、生きていると実感させるには努力と決意そしてスタミナがいる」 「自立性」「与益」「無危害」 「信じる者と疑う者」「最大限主義者と最小限主義者」「自然志向と技術志向」 「治療必要数」「…

判例時報2342号 特別縁故者、民事控訴審

・名古屋高裁金沢支部平成28年11月28日決定 被相続人の入所先の障害者支援施設に相続財産の全部(約2200万円)を分与するとして、これをまったく認めなかった原審決定を取り消した高裁決定です。 ・民事控訴審の審理の充実 実態調査を踏まえた提言…

二弁フロンティア2017年11月号 面会交流

講演録「別居・離婚と親子の面会交流」 FPICの山口さん…と思いきや、山口さんお二人いらっしゃるのね。恵美子さんではなく美智子さんのご講演です。 厚労省の調査研究事業。理想の面会をめざしてがんばっていた時代から、理想でなくても親子の縁をとにか…

判例タイムズ1440号 口頭協議

「福岡地方裁判所における民事訴訟の口頭協議活性化に向けた取組について~弁護士会とともに創る民事訴訟のより良いプラクティス」 早期事案説明期日、集中争点整理期日

中野信子「ヒトは「いじめ」をやめられない」

なぜいじめは起こるのでしょうか。なぜ人は人をいじめてしまうのでしょうか。 これは、脳科学ばかりでなく数理社会学や行動社会学などの見解も、いじめをはじめとする社会的排除行為が、ヒトが種として存続することを有利にしてきたことを示唆しています。 …

曽野綾子「夫の後始末」

強者礼賛の気があったことを認めつつ、そうはいかない状況の自分を振り返っているところ、最後のあがき、あがくことを、必要なこととして肯定しているところが印象的でした。

高梨ゆき子「大学病院の奈落」

「ラーニングカーブ」は仕方ない、ではなく、十分な指導体制、管理体制で回避すべきこと。

仲野徹「こわいもの知らずの病理学講義」

通読するとかしこくなったような気になれます。

ダン・オルヴェウス「オルヴェウス・いじめ防止プログラム」

オルヴェウスいじめ防止プログラム読み中。まだ序盤。アメリカでいじめ対策が進んだきっかけは、学校での銃乱射事件と。いじめを受けた子どもによる銃乱射多発で。そ、そうか…posted at 15:48:21いじめている生徒どうしのグループ対応は逆効果。いじめている…

ケイト・コーエン・ポージー「いじめられっ子の流儀」

普通に交渉術本の一種としても参考になりました。

川内有緒「パリの国連で夢を食う。」

パリに住んで国連に勤める生活を追体験できる楽しさもありつつ、人生の転機の小さい小石のくだりはほんとにそう。

佐久間裕美子「ピンヒールははかない」

セキュアであること、「comfortable in you own skin」。

シェリル・サンドバーグ「OPTION B 逆境、レジリエンス、そして喜び」

「Unfinished Business」が「LEAN IN」を超えているあいだに、シェリルもその先に行っているという感じ。

柴﨑哲夫、牧田謙太郎「裁判官はこう考える 弁護士はこう実践する 民事裁判手続」

書かれていることは志高めのスタンダード、変だったり鼻につくようなところもなく、感覚的に思ってることを、やっぱりそうよね、とスイスイ読めてところどころ参考になるので、それなりに年数経った者も読んでおくとよい本です。

判例タイムズ1439号 ガイドラインと医療訴訟、免責不許可

・「第9回 医療界と法曹界の相互理解のためのシンポジウム」 今回の読後感は裁判所に文句を言いたいというのではなく、展開が難しそうなテーマをうまく提案してよい読み物にしたなあという感想。 血栓症予防なんてみんなやってないみたいな話しが続く中、予…

ジュリスト1511号 医療訴訟

「裁判官に聴く訴訟実務のバイタルポイント 医療訴訟(2)」 東京地裁の審理運営指針(平成25年)の読み方など。平成19年指針との違いの背景、提訴前準備、計画審理は心がけはあれど現実問題として難しい、など。

家庭の法と裁判 2017年11月号 不貞慰謝料

・不貞行為慰謝料に関する裁判例の分析(2) 間接事実からの不貞事実の認定と経験則について。

アン=マリー・スローター「仕事と家庭は両立できない? 女性が耀く社会のウソとホント」

個人事務所で弁護士業やってるなんてのは組織の中のキャリアアップと比べればまことにお気楽なもので、しかし傍目からは仕事と家庭を見事に両立していると見えるようでそう言われるとそれは別に否定しない、いちいち謙遜するのもまだるっこしいのでそんなこ…

二弁フロンティア2017年10月号 面会交流

講演録「別居・離婚と親子の面会交流」 調停官の方の講演。面会親側が陳述書に書くべき項目。

浜屋祐子、中原淳「育児は仕事の役に立つ」

かくありたい状態と足元の現実と、考えると心もとないけど、理想論の部分が現実的にどうかはともかく、書かれていることはそのとおりと思います。 ひとさまの感想を見ていたときに出てきたこちら。 「育児は仕事の役に立つ」を読んで、モヤモヤがやってきた…

桜木紫乃「砂上」

この著者らしい乾いた情感がさらにハードになってるような。桐野が今よりもっとキレてたころ、ミロシリーズの最後の方みたいな感じ。よいです!

神林長平「いま、集合的無意識を」

もうこのさい神林じゃなくてもいいから「膚の下」みたいなSFが読みたい。黙って「膚の下」を再読してよう。

神澤志万「国会女子の忖度日記」

働く女子モノ枠、アタマ休めに。

ブレィディみかこ「子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から」

地べたからしか書けないという著者の柔軟な文体でつづられる衝撃的なエピソードたち。 イギリスの底辺がヴィクトリア朝状態で、しかしそこで底辺の人たちを救おうとする気骨のある人たちがいて捨てたものでないのもまたイギリスの底力。 たくさん書評出てい…

カーリー・フィオリーナ「私はこうして受付からCEOになった」

原題は「Tough Choices」。まさしくそうだなあ!