弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

2006-10-01から1ヶ月間の記事一覧

宮尾登美子「地に伏して花咲く」「もう一つの出会い」「お針道具」「成城のとんかつやさん」

宮尾登美子随筆一気読み。 文章は昼間に集中して書く等、文章作法への言及もあります。 力を抜いたような随筆でも、練れた文章が本当に素晴らしい。 まだ、自伝ものとこれら随筆しか読んでいませんが、ほかのも読んでみようと思います。 80歳になられたは…

坂東元「動物と向きあって生きる」

総ルビで、冒頭の子供のころのエピソードも子供向けっぽい語りなので、大人は入りにくいかもしれませんが、後半はわりと大人向けになっています。 レッサーパンダ事件など振り返り、成功で慢心があったかもという反省も含め、率直に書かれています。 動物園…

判例時報1938号 夫婦共有名義不動産の共有物分割請求と権利濫用

・大阪高裁平成17年6月9日判決 自宅建物を2分の1ずつ共有している別居中の夫婦の夫から妻に対する共有物分割請求が権利の濫用にあたるとされたものです。 夫から妻、娘に対する仕打ちはひどいのですが、夫にも、前立腺癌で余命を考慮して財産整理をし…

家庭裁判月報第58巻第10号 死亡保険金と特別受益

死亡保険金と特別受益については前にもご紹介しましたが、今回は肯定例と否定例を1例ずつ。 ・名古屋高裁平成18年3月27日決定 妻が取得する死亡保険金の合計額が約5200万円と高額で、遺産総額の61%を占めること、妻の婚姻期間が3年5ヶ月程度…

家庭裁判月報第58巻9号 離婚訴訟の管轄

・東京高裁平成17年12月9日決定 離婚調停(妻申立)中に妻が未成年者を連れて一方的に別居して(調停は取下)、別居の3ヶ月後に夫が夫の住所地の裁判所(調停と同じ)に離婚訴訟を提起したのに対し、妻が別居先の裁判所(妻及び子の住所地)への移送を…

ウイリアム・ユーリー「ハーバード流NOと言わせない交渉術」

「ハーバード流交渉術」の応用編。 ここでいう交渉術とは、相手の気持ちを動かすことをいうのですが、弁護士にとって交渉術のスキルは、事件の相手方に対してだけでなく、依頼者、そして裁判所に対する場面でも有益なものです。 おかれた状況を分析する補助…

山田昌弘「新平等社会―「希望格差」を超えて」

前著の「希望格差社会」で深く納得したのでこれも早速読みました。 格差はあるか、格差はよいものか、格差の原因は、という3つの問いを出発点として、問いの意味自体を見直しつつ分析されています。 そして解決策の提案も。 職業がら、いろいろな方のごく私…

司馬遼太郎「殉死」

読みながら終始いらいらと、こんな迷惑な人は、西南の役のときに思い通りに遂げていれば…とまで。 途中から、三島由紀夫の夫婦が自決する小説のタイトルは何だっけ?、そういえばあれは何に殉じたんだっけ…?と、読みながらもやもやしてきて(答え:「憂国」…

判例タイムズ1216号 さいたま医療訴訟

「さいたま医療訴訟パネルディスカッション2006」 なかなか、医療者側と法曹側でかみ合っていないというか、日頃、協議を重ねて分かり合っている関係ではないのだな、という感じがしました。 医療者側からは、悪い結果が出たらとにかく結果責任をとらさ…