弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

2023-01-01から1年間の記事一覧

家庭の法と裁判47号 子の引渡しと間接強制

大阪高裁令和3年8月4日決定 父の子連れ別居(実家に戻った)、母への引渡を命じた審判確定。直接強制不奏功(当時6歳)。原決定が間接強制月3万円→父抗告→本件は原決定取り消し、申立を却下。父は直接強制で妨害せず受忍、協力していたと。執行場面の録…

判例時報2569号 同性間の不貞行為

横浜地裁小田原支部令和4年4月26日判決 (元)妻の女性との不貞行為に関する夫から女性への慰謝料請求について132万円を認容。妻が証人に立って既破綻的な主張をしたことは結論としては容れられていませんが、原告が本件の尋問期日に長女を同行して傍…

ギャヴィン・ディー・ベッカー「暴力を知らせる直感の力」

・法律違反による逮捕は「法制度」対「法律違反を犯した男」の関係であるのに対し、禁止命令違反は「虐待者である男」対「妻」の関係。だから虐待者に対しては、あらゆる罪状を見つけて訴追するほうが、禁止命令を取るよりよい。 ・問題は安全の確保にあって…

富永誠一「女性・独立社外取締役 就任経緯、取締役会準備、兼職の実情から「悩み」の克服法まで」

わたくしも精進せねばと思ったのでした。

判例タイムズ1512号 訴状記載の住所

東京高裁令和4年4月19日判決 弁護士である原告の訴状記載の住所(民訴規則2条1項所定の「住所」)について、事務所所在地でよい。当事者の特定は他の者と識別することができる程度の特定、住所は居所、最後の住所、所属する事務所の所在地等によっても…

ケース研究348号 無戸籍者問題

令和4年実親子法改正の概要(嫡出推定・否認制度、認知無効の見直し) 真実性と安定性、推定の及ばない子法理は維持される?

京野哲也編著「こんなときどうする法律家の依頼者対応」、京野哲也「民事反対尋問のスキル」、深澤諭史「弁護士の護身術」

業界本いろいろ

こころの科学 232号 マイ・スリーハウス

・「児童相談所は子どもの声をどのように聴こうとしているのか」 マイ・スリーハウス しんぱいの家、よいことの家、ゆめ・きぼうの家 ・「離婚のプロセスで子どもの声を聴く」 ・「人生後半のアタッチメント」

尾身茂「1100日間の葛藤 新型コロナ・パンデミック、専門家たちの記録」

道の有識者会議ももうじき終了、に寄せて。 葛藤にはネガティブな印象がある。意見が対立すれば答えがなかなか見えず、不安定な状況に置かれる。この不安定さに耐えられず、物事を単純化して早くすっきりしたい誘惑にかられる。 現実は極めて複雑だ。安易に答…

NBL1251号 LGBT、セクマイ

「性的少数者の職場における処遇のあり方 経産省事件判決の検討」 企業実務における対応のポイント 自発的なカミングアウトの有無による場合分け 体制整備義務の存否・内容 性的少数者適正処遇体制の備えるべき要素

家庭の法と裁判46号 DV法、間接強制、養育費減額

・DV防止法 令和5年改正の解説 →令和6年4月施行 ・改正DV防止法による保護命令の新たな運用と残された課題 ・東京高裁令和4年10月31日決定 父→母への調停に基づく面会交流(コロナ禍で不実施3回分の代替日の設定)についての間接強制の申立を権…

二弁フロンティア2023年11月号 面会交流、フリーランス新法

・面会交流支援機関 第三者機関の実情と活用 ・フリーランス新法の成立と今後の展望

こころの科学231号 おとぎ話解釈法

「みえているけど気づかないこと ナラティヴの向こう側 攻撃性の背景にあるつながりへの思い」 おとぎ話解釈法!いいなあ

二弁フロンティア2023年10月号 美容医療

・美容医療の基礎とクレームの実際

2023年6~10月まとめ

・町屋良平「生きる演技」 これ、ものすごかった ・町屋良平「恋の幽霊」 こちらは、ちょっとわからず ・最相葉月「中井久夫 人と仕事」 これは実験であって、実験には失敗というものはない、なぜなら、それはまだ早いとか自分には合っていないらしいとかが…

家庭の法と裁判45号 婚姻費用

東京高裁令和4年10月13日決定 同居歴のない夫婦の妻からの婚姻費用分担申立。 原審は婚費の本質論?をやけにねっちり展開し(家事や育児の分担により就労制約、内助の功が生活保持義務の根拠で、別居後も育児の分担関係が残っていたり、同居中の家事育…

福丸由佳編「離婚を経験する親子を支える心理教育プログラムFAIT」

・失ったもの、得たもの、支えになったもの、という視点・子どもにとっての上記3点を考えてみる・これから親の離婚を経験する子どもたちへ先輩としてアドバイス・FAIT子どもの権利書・自己分化 情緒と知性が分かれて機能すること・当事者のやるせなさを…

こころの科学230号 心理療法のエッセンス

・森田療法のエッセンス プロセスの中でこころが動くとき気になりながら先に進む 子どもがチンドン屋にこころひかれながらおつかいにいく喩え

ケース研究347号 面会交流

「新しい運営モデル」の下での間接交流の検討・調整における留意点について量的補充機能、質的補充機能、橋渡し機能、代替機能

判例タイムズ1508号 高額所得者と婚費

・大阪高裁令和4年2月24日決定 自営収入約7500万円の開業医夫の婚姻費用→月額125万円。妻は夫との三子+夫の前妻の子(知的障がい)を監護。算定方法について解説も含めて。

判例時報2554号 離婚後同居からの連れ出し

東京地裁令和4年3月25日判決 離婚して父が親権者となったあとも父母子で同居していたが、非親権者である母が子らを連れて別居したこと、弁護士がこれを肯定する助言をしたことが不法行為を構成するとし、慰謝料100万円。

NBL1243号 ESG

中村直人「サステナビリティと実務の留意点」 サステナビリティは一般観念としては地球環境だが内閣府令の開示原則上は当該企業。

判例時報2552号 無効な離婚届の慰謝料、プレゼントのバッグ

・東京地裁令和4年3月28日判決 口論の勢いで妻が署名押印して渡した離婚届を夫が3日後に提出し、子2名を連れ出した→離婚は訴訟で無効となる。無効な離婚届出と子らの連れ去りについて慰謝料200万円+弁護士費用93万余(法律相談、面会交流等調停…

家庭の法と裁判44号 子の引渡しと権利濫用

名古屋高裁金沢支部令和4年3月31日決定 母が長女次女を連れて別居、二女(小2)が単身で父宅に戻った。母からの監護者指定引渡申立。両名について母と指定し引き渡すよう命じた。即時抗告後確定。母からの間接強制を権利濫用として却下(原決定維持)。…

判例時報2550号 財産分与と不利益変更

広島高裁令和4年1月28日決定 これは差戻後抗告審。経過はややこしいので要約パス。相手方が権利者と認めるべき場合に却下でなく給付を命じることができる、と家裁に差し戻し。

2023年3~5月まとめ

・西加奈子「くもをさがす」 ・中野信子「脳の闇」 ・熊谷晋一郎監修・森村美和子著「特別な支援が必要な子たちの自分研究のススメ 子どもの当事者研究の実践」 ・文學界2023年5月号 市川沙央「ハンチバック」 すごい! ・文藝2023年夏 佐藤究「幽…

デビッド・バインダーら「カウンセラーとしての弁護士 依頼者中心の面接技法」

・「依頼者中心法」その根拠→依頼者は問題の自立的な持ち主である、法律問題は非法的な結末を必然的に伴う、判断は常にリスクを含む、依頼者が判断を実行する・「言葉の凝縮」を探し分解する・依頼者の信頼性に関わる問い→「第三者」技法、「事前説明」の利…

家庭の法と裁判43号 面会交流、婚費、養育費減額と審判前保全、ペットの親権養育費

・東京高裁令和4年8月18日決定 別居中夫婦で子らは夫と同居。妻からの面会交流申立。間接交流とした原審を取り消し差し戻し。原審の問題点として、直接面会を検討すべき事情を適切に考慮していない、調査時期が古い、直接交流の支障はない二女まで間接交…

判例タイムズ1506号 子の引渡し

最高裁令和4年11月30日決定 同居父から母への引渡を命じた審判。任意の引渡の機会2回とも子が拒絶→子の引渡しの間接強制(原々審は1日2万円を命じた)を権利濫用として却下した原審を破棄した最高裁決定。最高裁平成31年4月26日決定(権利濫用…

判例時報2543・2544号 監護妨害

東京地裁令和3年11月30日判決 調停に代わる審判での離婚。親権者母、オーストラリア在住父による監護は年間120日。父は離婚後、再婚+連れ子を養子縁組。母がそれを知り子の旅券を更新せず父の監護が妨げられた→慰謝料30万円。