弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

家庭裁判月報第59巻第11号 婚姻中の慰謝料、年金分割

・広島高裁平成19年4月17日判決
婚姻継続中に妻が夫と愛人に対し慰謝料請求をして認容され確定し(300万円)、その後さらに、夫、愛人に対し離婚と慰謝料請求をした事案。
前訴と後訴の慰謝料請求の関係については、訴訟物が異なり前訴の既判力は後訴に及ばないとされました。
ただし、慰謝料額については、前訴の時すでに婚姻が形骸化していて、離婚訴訟における慰謝料としては「完全に形骸化した婚姻関係を法的に解消したことによって被る新たな精神的損害のみ」であって、本件では新たな精神的損害がないとして、慰謝料は認められませんでした(原審で100万認容を変更)。
でも、前訴では「離婚をしていないこと」も慰謝料額の算定に考慮されているようで、つまりそれは減額方向での考慮だと思いますが、それなのに離婚のときには増額されなかったわけです。
札幌高裁平成19年6月26日決定
「抗告人は、抗告人が定年退職する7年前から別居し、抗告人が定年退職した後は家庭内別居をしている旨主張する。しかし、前記引用に係る原審判が説示するとおり(「婚姻中の夫婦における被用者年金は、基本的に夫婦双方の老後のための所得保障としての意義を有しているから、婚姻期間中の保険料納付や掛金の払い込みに対する寄与の程度は、特段の事情がない限り、夫婦同等とみるのが相当である。」)、婚姻期間中の保険料納付や掛金の払い込みに対する寄与の程度は、特段の事情がない限り、夫婦同等とみ、年金分割についての請求割合を0.5と定めるのが相当であるところ、抗告人が主張するような事情は、保険料納付や掛金の払い込みに対する特別の寄与とは関連性がないから、上記の特段の事情に当たると解することはできない。」