弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

家庭の法と裁判37号 成年年齢、無職者の婚費養育費と収入擬制(賃金センサス)、教育費の按分割合・考慮済み額、子の監護者指定等、間接強制、特別の寄与

家庭の法と裁判(FAMILY COURT JOURNAL)37号

・特集「成年年齢引下げに伴う影響と対応」

・東京高裁令和3年4月21日決定

「婚姻費用を分担すべき義務者の収入は、現に得ている実収入によるのが原則であるところ、失職した義務者の収入について、潜在的稼働能力に基づき収入の認定をすることが許されるのは、就労が制限される客観的、合理的事情がないのに主観的な事情によって本来の稼働能力を発揮しておらず、そのことが婚姻費用の分担における権利者との関係で公平に反すると評価される特段の事情がある場合でなければならないものと解される。」として失職前の給与収入の5割程度の稼働能力を前提とした原審判を取り消した高裁決定(原審月4万円→却下)。義務者(夫)の失職理由は、精神錯乱で警察官に保護されたという経緯。最近の東京高裁は安易に潜在的稼働能力の考えを用いて収入を擬制することについて慎重な姿勢という解説。

・東京高裁令和2年10月2日決定

婚姻費用分担事件で教育費超過部分を2分の1(松本哲弘説)でなく基礎収入比(妻の年収130万で夫87%)とした高裁決定(原審も同様)。考慮済み教育費は25万9342円(実証的研究46頁。これは世帯平均年収761万7556円に対応するもので本件夫の年収957万円より低い)として、夫の収入に応じて37万円を考慮済みとした原審を変更。

名古屋高裁令和2年6月9日決定

母→父(監護親)への子の監護者指定申立を却下した原審判を維持した高裁決定。父が子を連れ出した別居態様に違法性なし。母の精神的不調、暴言、包丁持ち出し、別居後も精神的不安定行動などの事情あり。結論は父に指定でなく却下。

・東京高裁令和元年12月10日決定

父→母(監護者)への子の監護者指定引渡保全処分を却下した高裁決定(認容した原審を取消)。母は、父に対する傷害罪で逮捕勾留され(!)、将来の離婚時の親権者父とする示談を交わしていたが、釈放の1ヶ月後に父との協議承諾なく子を連れて別居したという経緯。原審は示談違反、子の面前での母の暴力を重視。抗告審は示談成立経緯から示談違反をことさら重視せず、従前の主たる監護母であることを指摘し本案認容の蓋然性、保全の必要性とも否定。原審判に基づく執行は済んで子の監護は父に移っているようです…。

・東京高裁令和元年11月21日決定

父→母の面会交流間接強制(調停に基づく面会交流月1回)。不履行1回5万円の原決定を維持。養育費は4万2500円×2人。

静岡家裁令和3年7月26日審判

被相続人の弟→被相続人の子への特別寄与料。特別の寄与否定+除斥期間経過で却下。相続人である子らは被相続人の前夫の子、離婚後は疎遠。申立人は被相続人の通院入退院に関与(ただし主な関与ではない)と主張。

・「父母の離婚をめぐる子の養育に関する法制度の見直し及び法務省の取組について」

法務省:父母の離婚後の子育てに関する法制度の調査・検討状況について

法務省:養育費の支払義務者が自営業者等である場合における養育費額の算定の在り方に関する調査研究報告書の概要

・「遺産分割事件のケース研究 遺産の範囲の確定に向けた調停運営に関する研究」