弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子の読書日記

日本弁護士連合会「日弁連研修叢書現在法律実務の諸問題 平成27年度研修版」「日弁連研修叢書現在法律実務の諸問題 平成26年度研修版」

山田知司「控訴審の審理と主張立証のあり方」(平成27年度版)と森野俊彦「最新版民事控訴審における主張と立証」(平成26年度版)を続けて読みました。

山田「控訴審の審理で争われているのは原判決ではないはずです。それに私の感覚でも、原判決がどうだとは考えたことがない」「控訴審は原判決の理由というのをあまり気にしておらず、むしろ原判決が整理した争点について自分で判断していく」

森野「審査の対象は原判決であることに鑑み、一審判決の問題点を厳しく主張せよ。」

原判決にひきずられることの有り無しのニュアンスが違います。

原判決で変な勝ち方をしてしまったときの対応→原判決に乗らない方が無難。利益衡量の結果勝たせてくれたというスジを主張するのは有効(山田)、より強固な勝訴理由を展開すべきで安易に原判決を持ち上げないこと(森野)

森野「この頃、地裁は医療訴訟専門部ですね。高裁は専門部ではないのです。けれども専門部が常に正しいとは限らない。専門部はかえって慣れてしまって、お医者さんのやることを是認する方向になると思うのですが、」

そのことよ。これはきっとどこかで使おう! 集中部は役割を終えたキャンペーン。

 

日弁連研修叢書 現代法律実務の諸問題<平成27年度研修版>

 

日弁連研修叢書 現代法律実務の諸問題[平成26年度研修版]

ケース研究329号 財産分与、対応困難者

・「財産分与に関する覚書」

東京家裁の財産分与の実務について。要チェックです。

退職金について「従前は、退職までに相当間があるような場合には分与対象とならないかのような議論があり、かつそれが有力であるような文献が散見されたが、現在の実務ではそのような考え方は採られていない。」

2分の1ルールを変更した具体例(かなり極端な資産家の例+夫を親権者として資産は子の教育資金のための蓄えとして夫に保有させるという例)

一方の資産がマイナスである場合の分与の計算。などなど。

・調停における対応が困難な当事者の事例

パネルの内容もさることながら、留意点として引用されている「家事紛争解決プログラム」の抜粋が、やさしいなあとあらためて。「対応が困難だと調停委員に感じさせてしまうその人自身が自分でも対応の困難さから逃れられず、他人に対応が困難だと感じさせながら、それを抱えて生きていくことを余儀なくされている。」このまなざし!容易なことではないですが。 

金融法務事情2068号 弁護士受任と時効

東京地裁平成28年7月29日判決

債務整理の受任弁護士からの方針の回答が「民事再生か任意和解」というものでも、時効中断事由たる債務の承認とはならず、受任弁護士の放置による時効完成を受任弁護士自ら援用する場合でも信義則違反といえないという裁判例です。