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弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子の読書日記

村上春樹「騎士団長殺し」

ライトノベルかと思うような上っつらな人物像や舞台装置のこっぱずかしさを我慢しながら読んでいくと最終的には言わんとすることの核はわかるしそうだねって思うけど、読ませるための仕掛けをこんなにもちりばめなきゃだめなのかなあって思ってしまう。

でもそんなこと言うと、保坂だってあれは小説といっていいのか、自己言及や諧謔、韜晦をまじえず小説然としては書けないってことじゃないか、どうなのか。

そういう意味では、後段、免色氏をドストエフスキーに出てくる人物になぞらえるあたりは、自己ツッコミとして機能していて、ドストエフスキーを持ち出すことによって、上っつらに見える人物造形もあえてやってることと分かるようになってることと、この分かる人には分かるメタファーっぷりがいかにも心憎い。

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編

藤沢数希「損する結婚儲かる離婚」

まあありていに言えばそういうことよね、ということが書いてある本です。当事者向け。弁護士は綺麗事しか言わないからこういうことを言ってくれないってあるけど、私はこれくらいはけっこう言いますけどね…。

普通の人は○○と誤解しているがこうだ、という箇所がいくつかあって、実際、当事者がよく「結婚って○○なはずじゃないですか」と当然のように述べる結婚観って、いや、民法上の結婚ってそういう制度じゃないけど…ってことも多いわけですが(そんなこといちいち言いませんが)、そういう誤解ってどこから生まれてるのか謎です。

損する結婚 儲かる離婚 (新潮新書)

小島信夫「靴の話/眼 小島信夫家族小説集」

保坂と庄野潤三と島尾敏雄が読めっていうのでとうとう読んでみた小島信夫のよさがまったくもって分からない我が身の悲しさよ。

視野狭窄的な文体が神林っぽい。「この世に2、3人しかいないと思ってるんじゃないの?」と妻に言われる場面なんて、ほんとそうだよと思うけど、こういうツッコミを自分で書けているということは、この視野狭窄さも自覚的な、あえての文体なんだとはわかる。それはわかるけど、どうしてもフツウの昔のブンガクって感じしかしなくて、保坂や庄野や島尾があんなに言うのによさがわからなくって、私ってつまんない女なんだわ(>_<)。

靴の話/眼 小島信夫家族小説集 (講談社文芸文庫)

江國香織「なかなか暮れない夏の夕暮れ」

何が起きるわけでもない日常の描写ですが(大竹氏の身の上には大変なことが起きますが扱いは気の毒なほど脇筋)、妙におもしろい。これ、好きです。USキッズランドなんていう読書向きでない空間で立ったり座ったりしながらこれを読んでると、読書中毒の稔氏とご同類としか言いようがなく! 

なかなか暮れない夏の夕暮れ