弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

アン=マリー・スローター「仕事と家庭は両立できない? 女性が耀く社会のウソとホント」

個人事務所で弁護士業やってるなんてのは組織の中のキャリアアップと比べればまことにお気楽なもので、しかし傍目からは仕事と家庭を見事に両立していると見えるようでそう言われるとそれは別に否定しない、いちいち謙遜するのもまだるっこしいのでそんなことはしないんですが、組織に属しつつ両立している人の大変さすごさとは比べものにならないよ私なんて、という控えめ感はいつも感じています。このくだりにはもっと続きがあるんですが書いてるうちに込み入ってきたのであとはカット。まあとにかく仕事と家庭についてゴチャゴチャ思ったり言いたくなったりしている者にはこれを読めと言いたい。必読。

冒頭の賛辞の部分にすごい言葉が並んでいるんですが、全て読んでから戻ると、ほんとにそうだと思います。

「義務感」ではなく「欲求」にひっぱられるというくだりは当事者にしか言い当てられない。処世術としても、なかなか言い尽くされないところの言語化も、価値観の提示も実践も納得。

仕事と家庭は両立できない?:「女性が輝く社会」のウソとホント

浜屋祐子、中原淳「育児は仕事の役に立つ」

かくありたい状態と足元の現実と、考えると心もとないけど、理想論の部分が現実的にどうかはともかく、書かれていることはそのとおりと思います。

ひとさまの感想を見ていたときに出てきたこちら。

「育児は仕事の役に立つ」を読んで、モヤモヤがやってきた。 - SHIBUYA+BAr

こっちもなるほどと思いました。前提を必ずしも共有してない人にも読まれる本としてはどうしても拾いきれない部分ってありそうで、心身の限界を超えたときの自分に出会うことって育児だけじゃないにせよ、乳児期育児ほどに継続的に脅かされることはなかなかないかもしれない。これを知っておくと試練への耐性が上がるのはたしかと思う。我が胎から出てきた子であっても際立って他者であることは、子が育つほどに分かってくるであろうもので、子との関わりをとおして他者との関わり方について突き詰めて考えることもシゴトには絶対活きると思う。

育児は仕事の役に立つ 「ワンオペ育児」から「チーム育児」へ (光文社新書)