弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子の読書日記

ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)
もう一度読み直そうと思って手元に置いておいたんだけど、どうにもすぐには無理なのでまたいずれということにしました。長いし、最初の方の信仰心の薄い婦人とかのぐだぐだ語りが難関でしょうが、我慢して読むと読んだ甲斐があります。
実はこの物語は、陪審員裁判で冤罪が生まれた物語なのです(高名・有能な弁護人の弁護にもかかわらず!)。前評判による犯人視が響いたようです。
あと、弁護士的な読みとしては、イワンパートで展開される「神の在不在」のテーマと、ミーチャの裁判での「訴訟上の事実認定」の問題がリンクしているのがおもしろいと思いました。訴訟上の事実とは、採用された証拠にもとづき認められる事実であって、常に真実とはいえないという限界があるわけで(ミーチャが無実の罪をかぶったように)、人間の知覚によって感ぜられる限りの現象にもとづいて神の在不在を論じることの限界と二重写しの構造にあります。このことは作中で明示的に対比されてはいませんし、訴訟上の事実認定の限界という認識がないと気づきにくい軸ではないかと思いました。