弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

判例時報2310号 特別縁故者、司法書士と弁護士法

 ・大阪高裁平成28年3月2日決定

身の回りの世話をしてきた近隣の知人と親族後見人について、特別縁故者であることを否定した原審判を変更して、各500万円を認めた高裁決定です。

・名古屋高裁金沢支部平成27年11月25日判決

司法書士代理人がした過払金返還和解について、債務者本人が弁護士法72条違反無効を主張することを信義則違反とした原判決を取り消し、無効主張と差額請求を認めた高裁判決です。

判例時報2309号 専門的知見、面会と親権

・「専門的知見獲得のための工夫 座談会方式の経験から」

医療訴訟で鑑定がポシャって私的意見書を出した医師らと被告医師との座談会方式で心証を得たという事例の紹介やパネルです。

・千葉家裁松戸支部平成28年3月29日判決

前に話題になっていたかと思うのですが年間100日の面会プランを提示した父(判決時点では子と別居5年10ヶ月)に親権を認め子の引渡を命じた裁判例です。

判例時報2308号 業務起因性

名古屋高裁平成28年4月21日判決

バス運転手の自殺について業務起因性を否定した原判決を取り消してこれを認めた高裁判決です。地裁も高裁も前提事実はそんなに変わらないのですが、精神的負荷の程度についての結論が違ってきています。

金融法務事情2055号 時効完成後の一部弁済と時効援用

浜松簡裁平成28年6月6日判決

時効完成後の一部弁済があっても時効援用について信義則に反しないという裁判例です。解説では債権者の対応がすごく問題であったという書きぶりですが実際これくらいはごく普通に行われている程度のことなので、一部弁済しちゃっていても諦めないでということですね。

判例タイムズ1429号 養育費、不貞慰謝料と非免責債権

・東京高裁平成28年1月29日決定

義務者が自身の収入減少、相手方の収入増加を理由に申し立てた養育費減額調停中に失職し、雇用保険を受給して求職しつつも再就職できないという事情を前提に、義務者の稼働能力をセンサスによって認定した原審を取り消して差し戻した高裁決定です。義務者が再就職できていない状況が義務者の主観的事情によって本来の稼働能力を発揮していないといえるかどうかの審理が十分でないと。

・東京地裁平成28年3月11日判決

不貞相手(女性。破産免責済み)への慰謝料請求事件について、不貞慰謝料請求権が非免責債権に該当しないとした裁判例です。

加藤陽子「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」

帯の鶴見俊輔氏の評で「目がさめるほどおもしろかった。こんな本がつくれるのか? この本を読む日本人がたくさんいるのか?」とあるのが、まさにそのとおりで、とにかく日本人なら!読んで知って考えてほしい歴史です。

それでも、日本人は「戦争」を選んだ

塩田武士「罪の声」

珍しくこういうのを。自分に酔った男調すぎたり、ソードマスターヤマトばりのムリヤリな謎解きだったり、そこまでしなくていいからというくらいの細かすぎて余白がない伏線回収だったり、という私がイヤに思うポイントはなくってよかったです。こういうタイプの小説って減点法でしか読めなくてすみません。記者の描写がオッサンぽすぎて、あ、36歳か、と何度か思い直しながら読みましたが自分のトシのせいでしょうか。

 

罪の声