弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

藤田宙靖「裁判と法律学」

蟻川先生が何しゃべってんのかな!という興味だけで手にした本書。しかし対談はもちろんですが本文もエキサイティングでした。

制度準拠的思考、良識、眼差し、平明さ、飾り言葉、裁判と学説、「法は単なる所与ではなく、つねに課題である。」、正義ではなく最も適正な解決、真犯人と無辜ではなく真犯人かどうか、垂直的正義と水平的正義。

裁判と法律学 -- 「最高裁回想録」補遺

加藤新太郎ほか「裁判官が説く民事裁判実務の重要論点 家事・人事編」

本書の位置付け的に当然ですが、基本的で当然のことが書いてあるだけでした。唯一、不貞相手に対する慰謝料の消滅時効の起算点(不貞終了と離婚に時間差がある場合)について妙に厚く書かれています(100~104頁)。

裁判官が説く民事裁判実務の重要論点[家事・人事編]

門口正人ら「訴訟の技能」

門口本2冊。「民事裁判の要領」は連載も読んでたのでまあ特にでしたが、「訴訟の技能」、1ページ1行目から「裁判は、闘争である。」とか、中村節がたまらない。まずはすべて信じてみる、おおらかに、ピンチのときほど楽しむ。などなど。たしかに私も先日は主観的にすごくピンチだったのですが過ぎてみれば何てことなかった数日間があり、あのときも楽しめば楽しめたはずだなあと今は思っているのです。

訴訟の技能――会社訴訟・知財訴訟の現場から

民事裁判の要領―裁判官の視点から

判例時報2310号 特別縁故者、司法書士と弁護士法

 ・大阪高裁平成28年3月2日決定

身の回りの世話をしてきた近隣の知人と親族後見人について、特別縁故者であることを否定した原審判を変更して、各500万円を認めた高裁決定です。

・名古屋高裁金沢支部平成27年11月25日判決

司法書士代理人がした過払金返還和解について、債務者本人が弁護士法72条違反無効を主張することを信義則違反とした原判決を取り消し、無効主張と差額請求を認めた高裁判決です。

判例時報2309号 専門的知見、面会と親権

・「専門的知見獲得のための工夫 座談会方式の経験から」

医療訴訟で鑑定がポシャって私的意見書を出した医師らと被告医師との座談会方式で心証を得たという事例の紹介やパネルです。

・千葉家裁松戸支部平成28年3月29日判決

前に話題になっていたかと思うのですが年間100日の面会プランを提示した父(判決時点では子と別居5年10ヶ月)に親権を認め子の引渡を命じた裁判例です。

判例時報2308号 業務起因性

名古屋高裁平成28年4月21日判決

バス運転手の自殺について業務起因性を否定した原判決を取り消してこれを認めた高裁判決です。地裁も高裁も前提事実はそんなに変わらないのですが、精神的負荷の程度についての結論が違ってきています。