弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

判例タイムズ1434号 間接被害、監護者指定

・「間接被害者の損害賠償請求」

・大阪高裁平成28年8月31日決定

母からの監護者指定、引渡申立を却下した原審について、双方の監護体制の調査を尽くすべきとして取り消して差し戻した高裁決定です。母側には、監護していた当時、男性関係、父に「子どもを捨てたい」とメールをしたという事情があり、父側における現状の監護体制は父の両親が担っているという事情があるようです。

論究ジュリスト21号 名誉毀損、発信者情報開示

「インターネット上の表現に関する名誉毀損訴訟・発信者情報開示訴訟」

飲食店の評価などは名誉毀損に当たらない方向で解釈できないかという方向性、などなど。

判例時報2323号 面会交流、間接強制

・東京地裁立川支部平成28年2月5日判決

面会交流を命じる審判が未確定(抗告中)段階での不実施について原告(父)からの損害賠償請求を認めず、また、原告が審判記録中の書面を謄写して担任教諭や小学校当に郵送したことについて、プライバシー侵害で損害賠償(30+3万)と差止を認めた判決です。

・東京家裁平成28年10月4日決定、東京高裁平成28年4月14日決定

面会交流の間接強制について、原審は1回100万円、抗告審は30万円とした事例です。載せ方を恣意的に感じてこういうのはちょっとイヤ。

松浦理英子「最愛の子ども」

長距離バス車内にて。

女子高校生の群像劇、若者の自意識、いくら鮮烈でももはやあんまり興味ないなあと思いつつサラサラと読んでいて、中盤、「あの人」のくだりで急にぐっときて(若者の生々しい生きざまより時間差をつけて振り返るこの部分の感じ!)、そして最後の語りでもっていかれた! この自分の未来への絶望感、「ナチュラルウーマン」の最後が思い出されて。

で、「ナチュラルウーマン」。

読みたくなって久しぶりに読み返したんだけど、「最愛の子ども」の最後を読んで、ああ、ナチュラルウーマン!と思っていたときの「ナチュラルウーマン」はもっと素晴らしい物語だったのに、いまあらためて読んでみると、私は記憶の中で「ナチュラルウーマン」を美化してたような気がする…、内容がどうというより、その行為はばっちいんじゃあ…と思えていちいち気が散ってしまって。

(あと、「ナチュラルウーマン」の3部構成って、痛々しい若さがどんどん退廃して観念と肉体が分離していくのが三島の「豊饒の海」を思い出して急に「豊饒の海」も読み返したくなった。)

「港って旅立つ場所っていうより帰って来ないといけない場所みたいに思える」「闘う価値もないものと闘うより、ひとまず離れた方がいい」「道なき道を踏みにじり行くステップ」「心を鍛えるだけでは幸せに生きて行くのに充分ではないのだ。」

このインタビューで、最後に希望を感じたというインタビュアーに、著者が意外と応えていて、そうたしかに、この一連は印象は絶望なのに字面は希望っぽくてどっちに読むんだろうと思ってたんです。

bunshun.jp

 

 

最愛の子ども

ナチュラル・ウーマン (河出文庫)

こだま「夫のちんぽが入らない」

怪作。こういうふうにしか生きられないものか?もうちょっと手前でなんとかして無難な人生になれなかったものだろうか??と思ってしまうけど、きっとそうなんだろうし、本人的に昇華できたからこうやって書けているんだよね? リアルには他人のことって、つらさもその昇華のされ方も傍目にはわからないものだけど…。

夫のちんぽが入らない