拾い読みで、へー知らなかったがいくつかあったので勢いで通読しました。「チェックポイント」シリーズもそうですが定番の文献の紹介もあるのがよいです。
判例時報2403号 物価水準と婚姻費用
東京高裁平成30年4月19日決定
中国在住妻(中国国籍)から日本在住夫(日本国籍)への婚費請求で、物価水準を考慮すべきという夫主張を入れなかった原審判(算定表の枠内で考慮すべき)を変更して日本100:中国70で算定(生活費指数で考慮)するものとした高裁決定です。
二弁フロンティア2019年7月号 成年後見
「成年後見実務の運用と諸問題」
マニアックめだけど知りたいようなテーマのQ&A。
・対立親族の本人囲い込みや本人が受診拒否事例での申立
・死後事務委任契約
・後見人報酬確保
・終了後の計算報告の範囲、対象
・対応困難本人と辞任
堂薗幹一郎ら編著「概説改正相続法」
このあいだ他会で改正相続法の講義の依頼があったけど結果としてお断りしてしまったのが申し訳なしですが、私は、講師が講師である必然性がなく単にお勉強の成果を披露するだけの研修、定例で何かやらなきゃいけないし若手に場数を踏ませておくかみたいな研修、1人で本を読んでおけば得られる知識以上の講師の熱さとかオーラとかしゃべりじゃないと伝わらないタイプの何かを得られない研修を憎んでいるのですみません。私がやってもそういうたぐいの研修にしかならないとわかっていたので。それに一応本とか読んで備えてるとはいっても、教えるレベルの勉強と、実務で当たったときにここ何かあったなと思い出してあらためて調べられる程度にインデックスを立てておく程度のレベルの勉強とではまったく違うじゃないですか。と、いじましく言い訳。
判例時報2402号 医療訴訟における高齢者の死亡慰謝料
「医療訴訟における高齢者が死亡した場合の慰謝料に関する一考察」
中井久夫「治療文化論 精神医学的再構築の試み」
解説によれば中井先生の「全ての発想が流れ込んだ合流点」という本書。語りはやわらかいのに語られていることの難しさ、わかるようでわからなさを全体として受け止めることによって読後の意識には不可逆的な変容が生じているマジカル。
・二次的疾病利得と正面から闘って勝ち目はない。それは天の時であって、ここで地の利と人の和をつくって実現させるべきである。
・治療者は船を浮べる水、鳥を支える空、いろいろなものを支える大地。おのれを虚しうせよ。自由にただよう注意。
・比較的順調な場合、自分は一つの虚点となり、存在しているのかどうかさえ分からなくなるが、しかもふしぎに不安がない。
・「それでよい」、「それがよいのだ」征服されることによって征服する友好的相互征服