弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

2007-01-01から1年間の記事一覧

長嶋有「夕子ちゃんの近道」

「泣かない女はいない」を読んだときはてっきり女性の作家だと思っていました。前は古い作家ばかり読んでいたのが、あるときから故人を読むのをやめて生きてる人だけ読むようにして、なおかつ同世代の作家をつとめて探していたのですがなかなかおらず、しか…

笹幸恵「女ひとり玉砕の島を行く」

著者のもどかしさが伝わります。

村上龍「ヒュウガ・ウイルス―五分後の世界〈2〉」

続編ということで。本編で何回か描写されていた、兵士とかが死ぬ場面でみせる「恥の表情」という表現、意味をわかってなかったのですが、こちらで解説されていてわかりました。

二弁フロンティア2007年7月号 任意後見

佐藤勝「任意後見の積極的活用方法」 公証人による講演です。遺言と任意後見とでは要する意思能力レベルが違う。任意後見は意思能力に疑問があれば法定後見にいけるが、遺言は、できなければ本人の意思を活かす選択肢がほかにないという局面の違い。任意後見…

草野芳郎「和解技術論」

この道の基本書と思います。技術を語るときに応用技に目がいきがちなのを、常に基本を意識させるよう論じているのが頼もしい感じ。

判例タイムズ1237号 調停論

坂梨喬「現代家事調停論 司法モデルから調整モデルへ」 人訴の家裁移管により調停の形骸化が懸念されたが、それには調停自体の内包する問題点(「過剰で直裁的な説得力の協調と調整力の脆弱さ」)から生まれる部分もある、と。従来の調停論をメッタ斬りしつ…

ケース研究291号 老親扶養

「高齢社会における老親扶養を考える」 扶養請求事件2件のケース研究。ケースでは、調停条項の工夫がみどころ。このほか、扶養料の試算方法、生活保護基準の見方の解説。一人っ子どうしの夫婦が双方の親から請求されたらどうなるか、特別受益を受けた子の扶…

判例時報1963号 カンファレンス鑑定

「東京地方裁判所医療集中部における鑑定の実情とその検証(上)」 東京地裁のカンファレンス鑑定はどんなものなのか、一度傍聴に行ってみたいものだと思ってました。 上編の今回は、3人の鑑定医の事前意見書とカンファレンス調書を掲載。意見書での3人の…

ロバート・B・チャルディーニ「影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか」

これは心理学の教科書? なんで読んでみようと思ったのか忘れたのですが、出張中じゃなければ読み通せなかったかも・・・ 人を動かすための原理を説いたものです。どれも根源的なことなので知ってることばかり書いてあるように思えますが、指摘してもらわな…

村上龍「五分後の世界」

村上龍を読んだのは実ははじめて。途中でイヤになって放り出すかもしれないから出張に持って行くのはリスキーかと思ったけどそんなことはなかった。世界が作り込まれていてスゴイ。緻密な文章。主義主張が説教臭くなる一歩手前かわずかに越えてるか、でもゆ…

池田晶子、大峯顯「君自身に還れ―知と信を巡る対話」

対談です。こいつらお互いわかるわかる言ってるだけで、読者にわからそうとは全く思ってないな…という感じでとっても難しいのですが、読み終わってからこのタイトルに戻ると、何をめぐる語りであったかあらためて胸に落ちる気がします。

大橋弘昌「負けない交渉術」、八代英輝「交渉の論理力!」

「負けない交渉術」ニューヨーク州弁護士の交渉ノウハウ!ということです。日常使いにはちょっとタフすぎるきらいもありますが、なるほどと思うことも多く読んでおく価値があります。 「交渉の論理力!」こちらはちょっとインパクトが薄いというか流して書い…

判例時報1961号 人身保護

「東京地裁における最近の人身保護請求事件の処理状況」 東京地裁の人身保護専門部による初歩的知識から事例まで網羅的な紹介。弁護士の書いたものはいくつかありますが、裁判所の文献はこれまでなかったような。人身保護を検討するときにはおさえておくべき…

岡田薫「捜査指揮―判断と決断」

東京法令というしぶいところが出してる本ですが、何カ所かで平積みにされているのを見ました。捜査の内幕や指揮官の思考法、あるべき警察の姿など。おすすめできます。仕事論、リーダー論的な面もあり。

ロバート M.ワクター他「新たな疾病「医療過誤」」

タイトルからはどういうスタンスの本かわからなかったのと、洋モノはあまり惹かれない(訳がいまいちで文章に納得できないことが多いので。これもわりとそう)ので手を出さないでいたのですが、興味深く読めました。でも、医療過誤に関わりなく読み物として…

江國香織「がらくた」

いつもの感じ、といえましょう。細部でおしゃれっぽくもあり、毒気もあり、安定感を感じます。

瀬木比呂志「民事訴訟実務と制度の焦点」

民事訴訟実務と制度の焦点―実務家、研究者、法科大学院生と市民のために 判タ連載中から読んでましたがあらためて、とっても分厚いのでやっとのことで。この道について考えたい方には必読書と思いますが、連載中ならともかくまとまってしまうとあまりのボリ…

判例時報1960号 法人格否認・未破裂An等

・東京地裁平成18年6月26日判決 国税が法人格否認して滞納会社の関連会社の財産を差し押さえたことについての国賠が棄却されたもの。国税は何の手続も経ないで認定で押さえてくるわけです。 ・高松高裁平成19年2月22日判決 一部請求の残部について…

田中正人「弁護士の『品格』ある「占有屋」の弁護士の場合」

弁護士の「品格」―ある「占有屋」の弁護士の場合 当地の田中先生のご著書。「占有屋の弁護士」は仮名で、読んだだけではわからないようになっていますが…。感想は書けません。

判例タイムズ1233号 低髄否定例

・福岡高裁平成19年2月13日判決 追突事故による低髄(髄液漏)の主張を容れず、頸椎捻挫の限度で損害を認めたもの。低髄を認めた原判決を変更しました。原判決で休損についての判示に疑問があったところも変更されています。

判例時報1959号 ERCP後膵炎

・長崎地裁佐世保支部平成18年2月20日判決 ERCP後急性膵炎による死亡事案で、経過観察義務違反を認めたものです。裁判例をみるかぎり、ERCP後膵炎に関しては、発症自体の責任は問いにくいものの、絶飲食指示や血液検査が適切に行われなかったと…

上杉隆「小泉の勝利 メディアの敗北」

著者が当時書いた記事について、その背景の解説とレトロスペクティブな検証とで挟んで再掲したもの。誤報も正直に載せて振り返っています。たいへんおもしろく読めましたのでおすすめです。

村山治「特捜検察vs.金融権力」

護送船団の崩壊とか国策捜査とか。おもしろかった! 事件の一つ一つは知っていても流れで示されるとその位置づけがよくわかります。ほぼ同時代といってよい近い過去に何が起きていたか。

判例時報1958号 採血でRSD

・仙台高裁秋田支部平成18年5月31日判決 健康診断での採血でRSDになったという事案で、過失を否定した原判決を取り消して約3460万円を認容したものです。 過失を認める判断過程が細かく、参考になりそうです。注射でRSDというのは公刊されて…

上田和孝「実務医療過誤訴訟」

前身の「実務医療過誤訴訟入門」から4年を経た改訂版。内容が高度になったということで「入門」が落ちました。ページ数も増えています。 「網羅思考」←→「仮説思考」、「断念も解決のうち」、医師の詭弁類型と対応などなど。 図解も入ったわかりやすい準備…

中村俊介「どこまでOK?迷ったときのネット著作権ハンドブック」

サイト開設者向けの著作権の解説本。紹介にあるように著作物のユーザー側からの本はたしかに珍しいかもしれません。ちまたには迷信のようないい加減な情報もありますから。わかりやすく良い本です。

吉川孝三郎×真壁?「医療事故訴訟における和解事例の研究」

吉川先生の事件27年間に100件余からピックアップされた和解事例、判決事例の紹介。 「研究」とあるけれど分析部分はほとんどなく事例の紹介だけで、吉川先生自身による振り返りもないので、特に教訓も引き出せず…

判例タイムズ1232号 証人尋問

研究会「事実認定と立証活動 人証の証拠評価」 これも読んどくべきものです。 主尋問が簡潔すぎるのは相手方代理人の怠慢か、虚偽が隠れているのか。細かく聞いていくと嘘が崩れることもあるが、相手方代理人の怠慢を繕ってあげるだけになる危険も。 証人を…

銀色夏生「ばらとおむつ」

最近、銀色夏生+イカで検索してくる人が多いですがどうしてでしょう。 新刊はけっこうボリュームがあって、移動中にぶっつづけで読んで、読むのが超早い私でも4時間近くかかりました。 普通におもしろかったです。イカさんのことも少し出てきますよ。むー…

長嶺超輝「裁判官の爆笑お言葉集」

説諭などでの印象的な言葉を紹介するものです。 内容はそんなにふざけていないので、タイトルの「爆笑」は余計だと思います。 あと、コラムで、裁判官が自分のことを「裁判所」と呼ぶ、というくだり、「建物としての裁判所」だけを念頭に書かれているのは、…