弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

2007-01-01から1年間の記事一覧

判例タイムズ1247号 セクハラ大逆転

福岡高裁平成19年3月23日判決 原判決がこちら。おやっと思うくらい心やさしかった原判決とうってかわって、セクハラの主張が厳しく排斥されています。大逆転。裁判の怖さを感じますね。

瀬戸内寂聴「晴美と寂聴のすべて」「老春も愉し」

随筆を書いた年代ごとに編んだもの。 ふりかえって書いているのではなく、そのときのものが再録されているため、そのときなりの勢いや揺らぎがみえておもしろい。 後半は追悼文が多く、無常を感じます。

東京弁護士会弁護士研修センター運営委員会「平成17年度専門弁護士養成連続講座家族法」

第一人者による講演ならではの、普通の本には書いてないようなツボにはまる知識が多いので、ぜひ一度さらっておくべきです。少なくとも持っておくだけでも。

刑務所シリーズ

固い本から柔らかい本まで。 ・菊田幸一+海渡雄一「刑務所改革 刑務所システム再構築への指針」 現状と将来について現段階ではいちばんまとまった本と思います。 ・福島瑞穂「福島みずほの刑務所の話」 ・坂本敏夫「死刑執行人の記録」 1人の刑務官が主人…

判例時報1973号 馴合訴訟

・東京高裁平成18年12月7日判決 スキー事故のケース。加害者の加入する保険会社が、馴合訴訟であるとして独立当事者参加したことについて、被害者と加害者が通謀した詐害的訴訟と認めています。参加の趣旨の書き方や、通謀による自白の撤回の処理なども…

判例時報1972号 離婚前の監護費・使用者責任と重過失

・最高裁平成19年3月30日判決 離婚前の子の監護費を離婚訴訟と同時解決の対象となるとした平成9年最判と同旨を再度述べたもの。家裁実務の扱いはこれら最判を救済的判決とみて、同時解決を認めないようですが、判例評釈は別の方向性です。 ・東京地裁…

藤原伊織「テロリストのパラソル」

会話文での二人称が「おまえさん」な小説は原則読まないことに決めてるのですが、空港の書店では例外もやむなしです。でもおもしろかったです。新宿中央公園は、公園の管理者の貼り紙がどことなく電波がかっていて好きです。

判例時報1971号 死亡等と隠れた瑕疵

・大阪高裁平成18年12月19日判決 売買した土地上建物で過去に殺人事件があったことが土地の隠れた瑕疵になるかについて、現場建物は既に撤去されており、殺人事件は8年前であるものの、現場建物の面積は土地の3分の1強であること、殺人事件であり自…

家庭裁判月報第59巻第8号 調停論、監護者、寄与分

・石田敏明「家事調停の運営と裁判官の役割について」 札幌家裁石田所長の論文です。 ・広島高裁平成19年1月22日決定 子の監護者指定申立事件で申立人を監護者に指定すると判断できない場合について、申立を却下した原審を変更し、相手方を監護者に指定…

塩野七生「わが友マキアヴェッリ」

佐藤優つながりで。塩野七生をはじめて読みました。食わず嫌いでしたが意外とよかった。佐藤優が自らの境遇をマキアヴェッリになぞらえるのはよくわかり、はまりすぎとすら思えます。 能力の発揮を封じられる境遇ほどつらいものはなく、どんな努力を払ってで…

判例時報1970号 名誉毀損とやぶへび

東京地裁平成18年9月7日判決 名誉毀損で訴えられた被告が、その訴訟において、原告(弁護士)に関する不名誉な事実記載を含む陳述書を提出したことについて、争点と関連のある内容であって名誉毀損にあたらないとしたものです。原告は、自分が原告代理人…

半藤一利「日本のいちばん長い日」

ひとたびはじめたことを終わらせるのは何であっても簡単ではなく、勝ち目が無くなったから負けて終わったんだと自然な流れのように思っていましたが、事態をプロスペクティブにみていくといかに大変なことであったかよくわかります。

判例時報1969号 主張変更の許否

福岡高裁平成18年2月14日判決 測量作業をしていた原告が橋の欄干から転落した事故に関する国賠訴訟。原告が一審の途中で事故態様に関する主張を変更したことにつき、一審は、信義則(民訴法2条)に反して許されないとしましたが、本判決は、変更前後の…

上杉隆「官邸崩壊 安倍政権迷走の一年」

官邸崩壊 安倍政権迷走の一年 出たばかりの本です。安倍政権発足から参院選の結果が出たとこまで。鮮度高いです。小気味よいほどのダメっぷりをみせつけてくれて、ダメさがどのあたりに由来するかがわかるように思います。時局ものというにとどまらず失敗の…

魚住昭「野中広務 差別と権力」

差別を受けながら権力をのぼりつめた道程。純粋に立身出世伝としておもしろく読めます。最後の最後で勝負を避けたことに差別が影を落としているとしたら恐ろしいことです。

原武史「滝山コミューン一九七四」

すでに小学生のときから学校が苦手だったような3〜40代の人が読むと、苦手の正体を知ることができるかもしれません。自主性、自発性を強いられるのが苦痛でならなかったことなど、忘れていた小学校時代のイヤなことまで思い出し、漠然とイヤだったのがな…

福本邦雄「表舞台 裏舞台─福本邦雄回顧録」

もっともっと裏のことがあるだろうと思いますが、そこそこ裏の描写も出てきておもしろいです。語りに味があるのも良いところ。岸首相の往生際の悪さ、人気が落ちて悪い顔になっていった様子の描写や、総理をやめさせるのがいかに難しいかというくだり、いま…

魚住昭「特捜検察の闇」

[asin:4167656655:image:small] カブトデコム、安田弁護士事件などなど国策捜査の失敗例。国策捜査というあり方自体の問題と、捜査の内実がおそまつであることについて。事態を直視せず詐欺という枠組みに押し込んで失敗した例をみると、朝鮮総連事件はどう…

判例時報1967号 非合理的な死因贈与と錯誤

東京地裁平成18年7月6日判決 長年夫婦同然の関係にあった女性に対する不動産の死因贈与が公序良俗に反しないとされた事例、ということで紹介されていますが、それはわりとあたりまえのことで、この判例は上記判示のほかに、長女の自宅の敷地になっている…

安田好弘「生きるという権利―麻原彰晃主任弁護人の手記」

これも「刑事弁護の技術と倫理」で引用されていたので。田中森一と続けて読むと振れ幅が大きすぎてわけがわからなくなります。とにかくすごい、異次元にいる人だとわかりました。批判にさらされていますが、そもそも立脚点がまったく違うのだと知れば理解で…

田中森一「反転」

売れてますね。そのとおりとってもおもしろいです。でも守秘義務違反しすぎ。あと、検察での取り調べの実態、検察ってやはりほんとにこうなんでしょうかね? ひどいです。子どものころの参考書詐取のエピソードが、三つ子の魂百まで的な象徴的なものだと思い…

ジュリスト1339号 医賠責保険

太田秀哉「賠償責任保険」 医賠責の種類や沿革について。保険事故の把握に発見ベースと請求ベースと2系統あって保険会社を切り換えるとき要注意なこと、責任の競合による求償問題など。

端和夫「脳の肥やしの脳卒中講義」

脳の肥やしの脳卒中講義 一般向けの脳神経外科の入門書。入院された奥様が読むために書かれたものです。内容は高度ながらわかりやすく良い本です。脳神経外科医としてのプロ意識、矜恃も感じます。

諏訪哲二「オレ様化する子どもたち」

「下流志向」で引用されていたので。「この私」「私そのもの」論はなるほどって感じです。

佐藤優「国家の罠」

「刑事弁護の技術と倫理」で引用されていたので。検事とのやりとり、検事と被疑者の間に育まれた人間関係が微細に書かれています。これは…検事からは、交流するふりして取り込んでやったんだよとでも言うしかないところでしょうが…真に受けるとすれば、敵味…

三浦展、上野千鶴子「消費社会から格差社会へ」

上野千鶴子と「下流社会」の人の対談。上野千鶴子については、理論的な正しさや一貫性のために現実の事象を無視して勢いだけで書いてるのではないかと思われて突っ込みを入れたくモヤモヤすることが多いのですが、あまりお仲間感のない人との対談なのでその…

山田詠美「無銭優雅」

エイミー、昔と違うなって思いました。枯れつつノリのよい文章。完成度高いです。

佐藤博史「刑事弁護の技術と倫理 刑事弁護の心・技・体」

尋問技術などは民事にも通じるものがあり、すぐ使わせてもらおうと思う技がいくつもあります。ああこれねって思われるとイヤなので書きませんけど。必読です。

判例タイムズ1238号 いぬ裁判

東京地裁平成18年11月27日判決 原告の飼い犬と被告の飼い犬がケンカして、ケンカを止めようとした原告が被告の犬に噛まれたという事件。そもそも原告犬がノーリードで、被告犬に吠えかかったのが発端であることが重視され、原告側の過失の方が重くとら…

青木孝「セクシュアルハラスメントをしない、させないための防止マニュアル」

セクハラについての改正均等法の説明や、パワハラについても、経営者や労働者などユーザー向けに広く書かれています。経営者向けにセクハラの講義などすることがありますが、社員のセクハラについて会社が使用者責任を負うという話ですら、意外、びっくり、…