弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

ケース研究331号 遺産分割、面会交流

・片岡武「遺産分割調停運営における留意点」

特に、調停に代わる審判を利用する場面と、そのときの当事者への説明事項。不成立にするために必要なプロセス。

・小澤真嗣「両親間の暴力や高葛藤が問題となる面会交流に関する米国の最新の研究と実践」←これ、この分野に一言あるヒトは目を通しておくべきと思います。

2014年シンクタンク報告。

親密なパートナー間の暴力(Intimate Partnet Violence。IPV)。力と支配のために一方的に暴力を使う加害者と、配偶者との相互作用的な葛藤の中で暴力を振るう加害者を分けて分類すべき。

DVの発見と保護の提供、紛争解決手続、子の監護に関する決定というプロセス。手続の目的に照らしたDVのスクリーニングとアセスメントのプロトコルの必要性。

DVのタイプ論。

力と支配に基づく暴力、暴力による抵抗、対等な関係性の中で状況的に起こる暴力、関係を破綻させる出来事が引き起こす暴力、という分類。

監護親によるゲートキーピング。促進的ゲートキーピング、制限的ゲートキーピング、保護的なゲートキーピング、バーチャル・ゲートキーピング。レッテル貼りではなく仮説設定のツール。

米国では裁判所が命じた面会交流を拒否した子を裁判所命令違反として逮捕の例もあるそう。

司法的ケースマネジメント。治療目的は両親の養育技能を高め、適切な親子関係を形成して、健全な子の発達を促進すること。裁判所命令は、従わないときに強制可能でないと、治療の効果は弱まってしまう。一方的に命じるのではなく、合意内容を裁判所が命令することが多い。

間接交流の積極的意義。

・「監護親の再婚により面会交流が中断した事例 面会交流の調停条項の決め直しをどう考えるか」

離婚後の単独親権者が再婚して養子縁組して共同親権となった後は別居親への親権者変更はできない(実務、多数説)。

間接強制の可能な債務名義のメルクマール、既に債務名義がある場合の調停の進行上の留意点。

同席調停の意義。相手の顔を見ないまま対立関係が続いていると、相手の否定的イメージが肥大化するが、同席によって等身大の相手イメージを取り戻す。調停委員との信頼関係が強くなり、現実的な解決の方向性が見えてくると、同席できるようになる。