弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

リチャード・ロイド・パリー「津波の霊たち」

出来事の描写だけで読ませる作品にはなり、実際そういうものも多いところ、本書は津波という出来事とそれにまつわる人々の具体を深めつつ、エピソードとエピソードの連関、対比の妙によって普遍・抽象に至る何かが取り出されています。

受け入れることと戦うこと。必ず死ぬという運命と、よく生きることのきわどいバランス。

津波の霊たちーー3・11 死と生の物語

判例タイムズ1446号 移送、子の引渡、養育費減額、子の監護引渡保全処分

・「民事訴訟法17条に基づく移送について 要件・考慮要素の検討を中心に」

移送は判断ぶれるときある感じがして見通しつけづらい印象があります。何か戦うときにつかえそうです。

最高裁平成29年12月5日決定

協議離婚で親権父となったが母が4年間子の監護を続けていた状況で、父からの親権に基づく妨害排除請求としての子の引渡仮処分申立を権利濫用とした最高裁決定です。

・東京高裁平成28年12月6日決定

養育費の権利者が再婚、子の養子縁組があった後、義務者がそれを知り養育費の支払いを停止して、申し立てた減額調停について、減額の始期を支払停止時とした高裁決定です。申立時とした原審判を変更。

・東京高裁平成28年6月10日決定

9歳、7歳の子を連れて別居した父に対し母が申し立てた子の監護者指定、引渡審判前の保全処分について、これらを認めた原審判を取り消し、申立を却下した高裁決定です。判示部分の引用は略しますが、要は保全処分の認容のハードルを高くした判断です。本案では、引渡が命じられたようです。弁護士と相手方当事者(母)の生々しいやりとりが摘示されています。

論究ジュリスト25号 調査嘱託

「現代における裁判所の情報収集や裁判のための証拠等収集の在り方をめぐる問題」

インターネットの利用について。なんとなく議論がうまくかみあってない感。

調査嘱託について、出す側の立場を裁判所が比較衡量しているのかどうか? なんかそういう明示の利益の衡量というよりただひたすら腰が重いだけではないかという疑いが個人的には。

訴状送達のための調査嘱託はつい先日やりました(そういえば調子があがらないときの景気づけに見てたeラーニングでその着想を得たような気がする。研修受けるの嫌いな私だがほんとにすごい人のすごい研修なら憧れでやる気がわくし実際役にも立つのでありがたい。本や雑誌には書かれない、しゃべりの行間や非言語的所作にのみにじむニュアンス、それを受け取った側への思いつかせる力って実はあるので読むだけではインプットが足りないなと最近思ってる)。そんな転用とかまで言わなくても、普通でいいことではと思いますが。

金融法務事情2088号 自筆証書遺言

東京地裁平成29年9月13日判決

姪に「すべてをまかせる」とした遺言で、姪の名に訂正があるが方式履践されていなくても、遺産全部の姪への遺贈として有効とした判決です。

佐藤雅彦「新しい分かり方」

「リーガルデザイン」と同時に買ってそのまま積んであって、そのときは格調高い?珍しいものを読みたい調子のときだったんだなあ。昼酒の友にしようと決めそういう午後を待ち、たのしく読みました。

新しい分かり方