弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

判例時報2372号 住宅ローンと財産分与、任意後見と法定後見、労災の因果関係

・東京高裁平成29年6月30日決定

元夫婦2分の1ずつ共有の不動産(連帯債務の住宅ローンあり)について、離婚後の財産分与の審判申立について、ローン残高とほぼ同額の元妻名義の預金担保があることから、預金と債務を通算して0円と評価して元妻の共有持分を元夫に分与した高裁決定です。

福岡高裁平成29年3月17日決定

長女による任意後見監督人選任申立→本人が長女との任意後見契約を解除し長男と任意後見契約→長女が法定後見に申立の趣旨変更→長男が任意後見監督人選任申立という事案で、長男の適格性を否定して法定後見を開始した原審判を維持した高裁決定です。

・大阪高裁平成29年9月29日判決

パワハラ自殺の労災訴訟で、パワハラうつ病発症、自殺との相当因果関係を否定した原審を取り消し、ルンバール事件の判例法理を引いて、相当因果関係を認めた高裁判決です。

吾妻ひでお「失踪日記2アル中病棟」

前に失踪日記本体も読んでいたのだけどここには書いてなかったですね。おもしろくて一気読み。

ちなみに私はずっと機会飲酒の人になりたいと願ってたのですがそれがこのごろ叶いつつあり、何でもないときに家では飲まない日々となってます。カフェインを断ったのも2年前のこの時期からで、季節の変わり目の体調の谷でこういうことになるのであって、意志の力などではなく、単に身体が弱ってきてるというだけかも。

失踪日記2 アル中病棟

先崎学「うつ病九段」

「医者や薬は助けてくれるだけなんだ。自分自身がうつを治すんだ。風の音や花の香り、色、そういった大自然こそうつを治す力で、足で一歩一歩それらのエネルギーを取り込むんだ」 

うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間

堀川惠子「戦禍に生きた演劇人たち 演出家・八田元夫と「桜隊」の悲劇」

教誨師」の、「原爆供養塔」の、「死刑の基準 永山裁判が遺したもの」の、堀川惠子さんとくれば間違いはないのですが、どうもちょうど脳が弱っていたタイミングだったし、タイトルや見た感じでは読もうかと思えず、しかし必読という強いプッシュを受けて読んだらやっぱり必読の書でした。

戦時中の作家への弾圧は知ってる気がしてましたが、演劇界への弾圧、戦争利用がどうだったか。投獄されてた者は戦後に出てくれば身綺麗ですがそこまでいかず生き抜いてきた者の背負った業。あと一歩の終戦まで生き抜けなかった者の悲惨さ。

こんな時代だからとかそんな大仰なことはあれなのですが。うもれた歴史がすぐれた作家によってこうしてまとめられ残されることの幸運、読めることの幸運を考えると、広く読まれてほしいのです。

 

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戦禍に生きた演劇人たち 演出家・八田元夫と「桜隊」の悲劇教誨師原爆供養塔 忘れられた遺骨の70年 (文春文庫)死刑の基準 「永山裁判」が遺したもの (講談社文庫)