弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

金融法務事情2107号 民事信託、事業承継、預金債権特定

・「民事信託の活用と今後の課題」

・ 「民法(相続法)の改正と事業承継」

遺留分算定の基礎財産に参入される「特別受益」と遺留分侵害額の算定に際して差し引かれる「特別受益」は違う。相続開始前10年の受益は、被請求側分は参入されず、請求側分は参入される。

基礎財産への受益の前10年への限定により生前贈与の効力増強といえる。

・「預金債権の特定・再論 近時の抗告審裁判例に対する検討」

ネット専業銀行の全店一括順位付け方式の債権差押を認める抗告審決定(名古屋高裁金沢支部平成30年6月20日決定)。

 

NBL1139号 相続法改正

「相続法改正の概要」

寄与分の要件が「特別の寄与」だけど新設の「特別の寄与料」も「特別の寄与の制度」とかって言われるのでまぎらわしい…。

寄与分は、通常の貢献は相続分による取得で評価されているという前提で「特別の寄与」のハードルが高いが、「特別の寄与の制度」の寄与はそうした「通常の寄与」との対比ではない、と。

 

家庭の法と裁判18号 養育費と扶養料、監護者指定引渡、婚費減額の分割払

・大阪高裁平成30年3月15日決定

原審が養育費事件(母申立。終期を大学卒業まで+学費の支払いを求める)と扶養料請求事件(子本人申立)と2件ある抗告審で、支払いの終期を大学卒業までとし、子が20歳になったということで債務名義を扶養料に一本化した高裁決定です。

この解説書いたの誰? 「破産宣告」という懐かしの用語が。

・大阪高裁平成30年3月9日決定

協議離婚時に親権者を父と定めつつ母が監護していた子について、父がGW明けに子を戻すと虚偽の説明をして子を引き取ったまま返さなかった件で、離婚により一方が親権者であってもその時点において子の監護者に関する協議が調わない状況であれば家裁が子の監護者を指定できるとした上で、母からの子の監護者指定引渡申立を認めた高裁決定です(原審は「明らか」基準で却下)。母の監護は5年2ヶ月、父の監護は10ヶ月。

福岡高裁平成29年7月12日決定

夫から妻への減収を理由とする婚費減額申立について、夫の減収自体ではなく、妻の給与収入が生じたことを理由として婚費減額が認められ、過払い分について即時支払いは酷として月額2万円ずつ(=毎月の減額幅)の返還とした高裁決定です。そもそもこの過払い分の扱いについては家事審判の対象外とする立場、将来分への充当処理とする立場もあると。

判例時報2388号 面会交流

札幌高裁平成30年2月13日決定

子(12歳、9歳)と申立人父との面会交流について、調査官調査で子らが面会に拒否的で、試行面会も実施できなかったが2ヶ月に1回程度の面会を認めた原審判を取り消し、申立を却下した高裁決定です。父は、母が生活費のために預金を引き出したことについて警察に通報したり、母と銀行と市に訴訟提起したりしています。当事者間の紛争の実情から面会交流を実施できるだけの信頼関係と協力関係が形成されているとは言いがたいと。